「蛇の道は蛇」とは
「蛇(じゃ)の道(みち)は蛇(へび)」とは、考え方や立場の似通った「同類の者」同士は、お互いのする事なす事についてよく知っている、ということを例えていった言葉です。
そこから、「ある特別な状況や事件などを突破したり解決したりするためには、それに詳しい専門家に尋ねるべきだ」という意味にも捉えられています。
もう少し具体的に言えば、「ヤクザのすることは同じヤクザが一番よく知っている」ということであり「ある種の犯罪を解明するためには犯罪者をあてにすればよい」といった感じの意味内容になります。
「蛇」の読み方について
「蛇の道は蛇」は「じゃのみちはへび」と読みます。「へびのみちはへび」や「じゃのみちはじゃ」という言い方は慣用としてしていません。ではなぜ、最初の「蛇(じゃ)」と二番目の「蛇(へび)」では読み方が異なるのでしょうか?
「大蛇」と「くちなわ」
その理由は、最初の「蛇(じゃ)」は「大蛇(だいじゃ)」のことを、二番目の「蛇(へび)」は小さなヘビのことをそれぞれ指しているから、というのが一般的な解釈のようです。
「大蛇」は「おろち」とも読むことがありますが、読んで字のごとく、巨大な蛇のことを指します。つまり「大蛇の通り道は小蛇もよく知っている」というのがこの言葉の由来と言えます。
ちなみに、「朽縄(くちなわ)」はヘビの古い呼び名です。「朽ちた縄」と見間違えるようなヘビですから、きっと小さいヘビなのでしょうが、「蛇の道は蛇」の同意語として「蛇の道は朽縄が知る」という言葉もあります。
ドラゴンボールの「蛇の道」
余談ですが、漫画やアニメ作品として名高い『ドラゴンボール』に登場する「蛇の道」は、「へびのみち」と読みます。こちらを先に知ったことで、「蛇の道は蛇」の読み方を勘違いしている場合もあるかもしれないので、一応言い添えておきます。
「蛇の道は蛇」の用法
「蛇の道は蛇」の使い方を紹介します。
「お前のようなボンボンの出る幕じゃない。蛇の道は蛇っていうだろ、専門家に任せておきなよ」とか「我が社ではハッキング対策のために、ハッカーを雇うことにしました。まさしく『蛇の道は蛇』ってわけです」のように使います。
「蛇の道は蛇。詐欺師には詐欺師だ」などと言えば、映画『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』で有名になった天才詐欺師「フランク・アバグネイル・Jr」を彷彿とさせるものがありますね。
「蛇の道は蛇」の類語
「蛇の道は蛇」には多くの類語が存在しますが、そのうち代表的なものと、少しニュアンスが違いますが相通じる言葉を紹介します。
「餅は餅屋」
「餅は餅屋」は「分野のことは、それぞれの専門家に任せるべき」というもののたとえです。また「いくら上手でも素人ではプロにかなわない」という意味合いもあります。
これと全く同じ内容を表した慣用句として「馬は馬方」「刀は刀屋」「酒は酒屋に茶は茶屋に」といったものもあります。
「毒を以て毒を制す」
多少意味内容は異なりますが、「毒を以て毒を制す」も「蛇の道は蛇」と同質の雰囲気を感じさせる言葉ではないでしょうか。
「毒を以て毒を制す」は「悪を滅ぼすために別の悪を用いる」という意味です。「蛇には毒がある」ということから連想されやすいのか、「蛇の道は蛇」もほとんど同じような意味合いで使われていることがあるようです。
「蛇の道は蛇」とアウトロー
「蛇の道は蛇」の類語を調べていたところ、あるシソーラスには「非道」という2文字も挙げられていました。「毒を以て毒を制す」がそうであるように、「蛇の道は蛇」はどうしてもアウトローな感じというか、端的に「悪」を感じさせる言葉であるようです。
それは、蛇は古来から悪魔であったり害をなす存在として、人間に見られてきたことと無縁ではないでしょう。