「期せずして」の意味とは
「期せずして」とは、思ってもいなかった、予想していなかったという意味の連語の慣用句(辞書によっては副詞としているものもあります)です。別の表現をするなら、偶然に、思いがけずとなります。
「期せずして」は、予め物事の期限を決めたり、実行しようと予定することを意味する「期する」に、打消しの助動詞「ず」の連用形+接続助詞「して」の連語「ずして(~しないで、~でないといった意味)」がつながって、上記のような意味を持つ言葉です。
このように「期せずして」は、予定外のことが起こることを表す表現ですが、「突然」にも、予期しないことが起こるという意味があるため、「期せずして」が誤用されることがあるようです。そこで、次の項では、「期せずして」と「突然」の違いを見ていきます。
「期せずして」と「突然」の違い
「期せずして」は、「偶然に」ということですから、「偶然」と「突然」の違いを検討します。「偶然」は、上記のように、思いもかけなかったことが起こること、たまたまということです。一方、「突然」は、思いもかけなかったことが急に起こることです。
この「急に」が、「偶然」と「突然」の異なるところです。具体的な例を挙げると、「偶然、駅で友達に会った」と言いますが、「突然、駅で友達に会った」とは言いません。また、「突然、怒り出した」とは言っても、「偶然、怒り出した」とは言いませんね。
このような「偶然」と「突然」の違いですが、どちらを使うのか迷う場合は、「急に」という意味合いの強弱で判断すれば、わかりやすいのではないでしょうか。このような違いを踏まえていれば、「期せずして」の意味を勘違いして使うことを防げるでしょう。
「期せずして」の使い方
上記のように「期せずして」は、私たちの日常生活の中で思いがけないことに出会ったときに使います。
【例文】
- 旅行に行きたいなと考えていたら、期せずして、夫が「どこか旅行に行こうか」と言い出した。
- いつも対立している彼と僕だが、今回の議題については、期せずして同じ意見を持っていた。
- 小学校時代の同級生だったA君と期せずして、会社訪問の時に再会した。
- 期せずして、フランス行きの飛行機に隣り合わせた女性と、その後結婚した。
「期せずして」の類語
「はからずも」
「はからずも」は、「図らずも/計らずも」とも表記します。予想外のことが発生したり、結果が予想外であったりした場合に、思いがけなく、意外なといった意味で使う副詞です。構造は、動詞「はかる」の未然形に打ち消しの助動詞「ず」+強調の副助詞「も」が付いた形です。
「図る」には、考える、予測するという意味があり、「計る」にも、予測するという意味があることから、どちらの漢字を使っても間違いではありませんが、どちらかというと「図らずも」のほうが多く使われています。
【例文】
- 先方の担当者と趣味の釣りの話で意気投合して、はからずも契約がトントン拍子にまとまった。
- 誰が見ても悪手だと思われた挑戦者の一手が、はからずも好手だったこともあり、挑戦者が逆転してタイトルを奪取した。
「はしなくも」
「はしなくも」は、「端無くも」と表記することもあります。「端無く」に詠嘆の思いを込めた表現で、きっかけ(端緒)もなく物事が起こること、思いもかけず、偶然にといった意味を持っています。
【例文】
- 今回の作品展はあまりいい出来ではなかったが、はしなくも評判になって、大勢の観客で会場が賑わった。
- はしなくも言葉の行き違いから、親友と口論になり、しばらく口をきかなかった。
「たまさか」
「たまさか」にも、思いもかけないで、偶然にという意味があります。漢字表記では、「偶さか/適さか」と書きます。「偶」と「適」は、どちらにも、たまたまという意味があり、予期しないでというニュアンスがあります。
【例文】
- 休みの日に川べりを散歩していたら、たまさか大学時代の友人と出会った。
- たまさか見かけた女性に一目ぼれしてしまった。