「端倪」の意味とは?
「端倪」(たんげい)の意味は、2つです。
- (物事の)初めから終わり。最初から最後まで。
- 初めから終わりまでを推測する、予想する、見通す。
この場合、「端」は、物事の初め・きっかけ・糸口、「倪」は、際(きわ)・はし・境(さかい)・終わりを意味します。
「端倪」の出典
「端倪」の出典は、孔子と弟子の問答から取った寓話をおさめた中国の書物『莊子・内篇・大宗師編』(そうじ・ないへん・だいそうしへん)です。この中で、「端倪」は1の意味で使われ、「人生の最初から最後」を表しています。
反復終始(はんぷくしゅうし)し、端倪を知らず
【現代語訳】
人生の初めから終わりが何度も繰り返されているのを、世の人は知らない。
「端倪」の使い方
現代日本語では、「端倪」という言葉単体で使われることはほとんどありません。多くの場合、「端倪すべからず・端倪すべからざる」や「端倪し得ない」「端倪を許さない」などの慣用句として用いられます。
これらの慣用句において、「端倪」は2の「初めから終わりまでを推測する」という意味です。打ち消しの語と組み合わせて、物事や人物の性質が計り知れない・結末や将来を見通すことが出来ないことを表します。
次の項からは、これらを代表して「端倪すべからず」について見ていきましょう。
「端倪すべからず」とは
「端倪すべからず」は「睥睨する」+「べからず」で成り立っています。「べからず」は推量の助動詞「べし」の未然形と打ち消しの助動詞「ず」の組み合わせで、ここでは「~できない」と不可能を表す連語です。
「端倪すべからざる」は、打ち消しの助動詞「ず」が連体形の「ざる」に変化し、後に続く名詞を修飾します。たとえば、「端睨すべからざる人物」は、将来どのようになるのか想像もできない人物という意味です。
これらはおもに人物の評価や印象を述べる際に使います。単純に「想像できない」というニュアンスで使うこともあります。しかし、以下の例のように、良い意味でも悪い意味でも用いられることがあるので、前後の文脈に注意して判断する必要があるでしょう。
良い意味 | 悪い意味 |
---|---|
・どんな素晴らしい結果になるか想像もつかない。 ・予想以上に将来性があるように感じられる。 |
・底知れぬところが合って油断ならない。 ・甘く見てはいけない。 ・何を考えているか分からず、脅威に感じる |
「端倪すべからず」を使った例文
- 第一印象だけでその人の能力ははっきりと分からない。「端倪すべからず」を念頭に置き、長い目で見るのも大切だ。
- 彼女は端倪すべからざる人物で、多くの人が彼女の将来に期待している。
- 一見目立たないが、彼の実力は端倪すべからざるものだ。侮らないように注意しよう。
「端倪すべからず」の出典
「端倪すべからず」の出典は、中国の文人韓愈(かんゆ)が書いた『高閑上人を送るの序』(こうかんしょうにんをおくるのじょ)です。
草書の名人である張旭(ちょうきょく)の書の才能について評価する際に、「端倪すべからず」という言葉を使って、計り知れない才能の持ち主であると褒めています。
旭の書は、変動して猶(なお) 鬼神のごとく 端倪すべからず
【現代語訳】
張旭の書は、まるで自由自在で変化に富む鬼神のようで、その才能は計り知れない。
「端倪すべからず」に似た表現
底知れない
「底知れない」(そこしれない)とは、限度が分からない、無限である、程度が想像を超えていることを表します。「底」はこの場合、物事の極まるところ、果てという意味です。
たとえば「底知れない闇」「底知れない恐怖」など、人物やその性質以外の状況や状態を表すときにもしばしば使われるという点は、「端倪すべからず」と異なります。
【例文】
- 師匠は彼女の底知れない才能をいち早く見抜いていた。
- 何日もの間、家族と連絡が取れず、底知れない不安を感じた。
- 私は宇宙の底知れない魅力にとらわれて、宇宙飛行士を志した。
推し量れない
「推し量れない」(おしはかれない)は「推し量る」の否定形で、似た物事を当てはめて予測するのが難しい、おおよその見当をつけることができないという意味です。
「端倪すべからず」と違って以外に対して用いることも多く、物事や事象などに対しても広く用いられます。
【例文】
- 私ごときには、才能豊かな彼の将来を推し量れない。
- 人の気持ちを推し量れない彼女は、優秀だが対人トラブルを起こしやすい。
- 今年の台風は例年と違って、その動きを推し量れないらしい。