「お局」とは?
「お局」は「おつぼね」と読みます。俗に、職場で勤続年数が長く、特に同性の同僚に対して力を持っている女性のことを表す言葉です。多くの場合、「婚期を逃した独身女性」に対する揶揄を交えて「お局様」という形で用いられます。
もともとは、「御局」と表記される身分ある女性を表す言葉でした。身分制のなくなっている現代では、当然ながらこの意味で使われることはほぼありません。
「御局」の意味
「お局・お局さま」の語源である「御局」という言葉は、以下に挙げるような意味を持ちます。
- 宮中で、局(つぼね)を与えられた女官の敬称。
- 江戸時代、将軍家・大名家で局を与えられた奥女中の敬称。また、その奥女中を取り締まった老女の敬称。
- 局女郎のこと。
「局(つぼね)」とは?
「局(つぼね)」とは、「宮中や貴人の邸宅で、そこに仕える女性の居室として仕切った部屋」や、「大きな建物の中を臨時に仕切ってつくった部屋」という意味を持つ言葉です。
そこから転じて、「そのような部屋に住む人」として「身分の高い女性」を意味する言葉になりました。元来の意味も、そこからの意味の転じ方も、「御曹司」と同様です。
「局女郎」とは?
「局女郎(つぼねじょろう)」とは、京都の島原および江戸の吉原にいた最下級の遊女を指す言葉です。「端(はし)女郎」とも言います。
江戸時代には、本来の「身分の高い女性」という意味での「御局」と、下級の遊女を指す言葉での「局女郎」が同時に存在したことになります。若干の皮肉や揶揄を含んだ言葉と考えることができます。
元祖「お局さま」
歴史上で最も有名な「お局さま」といえば、春日局が挙げられるでしょう。江戸幕府3代将軍徳川家光の乳母であり、江戸大奥の礎を築いた人物です。
松平信綱、柳生宗矩とともに家光を支えた「鼎(かなえ)の脚」の一人に数えられ、当時の女性としては異例なことに、朝廷との交渉の前面に立つなど、近世初期における女性政治家としての一面も持っていました。
本名は斎藤福、「春日局」は朝廷から賜った称号です。いわば、「公認されたお局さま」ですね。
「お局」の意味の変遷
春日局は、家光の乳母として彼の側室探しに尽力、大奥の役職や法度などを整理・拡充し、実質的には老中をも上回る権力を得ました。
「春日局」の称号も、死後贈られたものではなく、自らの政治的な活動の結果得たものです。「身分の高い女性」「奥女中の取締役」という意味で「お局さま」と呼ばれるのは当然ですが、そこには揶揄の意味はありませんでした。
「お局」という言葉に良くないイメージがついたのは、1989年に放送された大原麗子主演のNHK大河ドラマ「春日局」からだとされています。このドラマでの「春日局」の振る舞いが、「古参OL」のイメージと重なり、「お局さま」という言葉が大流行しました。
「お局」まとめ
「お局」「お局さま」という言葉は、現代では本来の意味から離れて「嫌味な古参の女性社員」という意味で使われます。更には、「その性格から『嫁の貰い手』がない女性」といった揶揄の意味を含む言葉です。
「職場の嫌味な女性の先輩」ぐらいの軽い意味で「お局さま」という言葉を使いたくなる局面もあるかも知れませんが、意図せず相手を傷つけてしまう可能性があります。少なくとも、公の場で使うときには、十分な注意が必要な言葉と言えるでしょう。