「すれっからし」とは?
「すれっからし」とは、社会に出て経験を積むうちに純粋な心をなくして悪賢い性質に変容してしまうこと、または、純真さが感じられないようになってしまった人のことです。
人が成長していく中で挫折を経験したり、ひどい生活を味わったりするうちに、子供の頃はうぶで純粋だったけれども世間の裏の面を知り、だんだんと図々しくなっていくことがあります。そうした様子を「すれっからし」と表現します。
「すれっからし」もともとの形は?
「すれっからし」は「すれからし」に「っ」が入って促音化した形で、同じ意味です。漢字では「擦れ枯らし/擦枯/摩枯」などと表記します。人が世間にもまれて心が擦り切れ、草木が枯れるように純粋さがなくなっていく状態が連想されるのではないでしょうか。
古語では「すれからし」で、さんざん色々なことにあって蓄えが尽きる、食い詰めて暮らしが立ち行かなくなることを表す場合もあったようです。
「すれっからし」の使い方と例文
「すれっからし」は文語的な表現で、日常的な話し言葉よりも、少し前の時代をテーマにした文学作品やドラマ、映画などのセリフなど、芸術作品で用いられることが多いです。
この言葉は相手の悪知恵に長けた性質を表現する、もしくは、自虐的に世間ずれした性格を評する際にネガティブな意味で使われます。
性別は限定されていませんが、特に年配の男性が、生意気で厚かましいと感じる女性に対し「すれっからし」といって、相手を見下して使うケースもあります。
「すれっからし」の例文
- あんなに素朴だった子が、中学校を卒業してから随分苦労してすれっからしになってしまったな。
- あの人は自分のことを「やさぐれたすれっからし」と言っているが、心の奥底では優しくて情深いのではないかな。
- 昔を知る人は彼女のことを、「すれっからしで付き合うのはやめたほうが良い」と言う。
- あのすれっからしの女は、事あるごとに楯突いてくる目障りな存在だ。
「すれっからし」の類語
世間擦れ
「世間擦れ」(せけんず-れ)とは、世の中で苦労するうちにずる賢さを身に着け、上手く立ち回るようになることです。「擦れ」は、世間にもまれるうちに要領が良く立ち回れるようになり、かつての純粋さや真面目さが失われることを表現します。
しかし、文化庁の平成16年度「国語に関する世論調査」では、「世間擦れ」の意味を約3割の人が誤解しているという結果が出ています。間違う人は「擦れ」を「ずれている」として、「世間一般の常識から外れている」意味に取っているということです。
【例文】
- Aさんは実家の会社の倒産などの憂き目にあって、すっかり世間擦れしてしまった。
- 彼女は世間擦れしていないので、両親は悪い人間にだまされないか心配しているそうだ。
食わせ者
「食わせ者」(くわせもの)とは、ちょっと見ただけでは普通の人と大差ないように見えますが、実際は油断がならない人物のことをいいます。
「すれっからし」は大抵の場合、振る舞いや言動などから悪賢い様子が見て取れますが、真の性格が分かりにくい分「食わせ者」の方がタチが悪そうですね。
【例文】
- Bさんはしとやかに振る舞っていても、関わった男性はみな不幸になる、とんだ食わせ者だよ。
- ミステリーの犯人は嫌疑から程遠い好人物が多く、実在したら絶対食わせ者だと言われるよね。
狡猾・狡猾老獪
「狡猾」(こうかつ)とは、ずるく悪知恵が働くことです。「狡」も「猾」もずるい、こすい、悪賢いなどの字義を持ち、同じような意味の漢字を重ねて強調しています。
なお、「狡猾老獪」(こうかつろうかい)という言葉もあり、経験をたっぷりと積んでずるくなり、悪賢さを身につけることです。「老」は成長して経験を積むこと、「獪」は悪賢いことです。3つの字義にずるいなどの意味が含まれ、悪賢さに磨きがかかっているようですね。
【例文】
- 相手は狡猾な詐欺師だ。あちらのペースに乗ってだまされないように注意して。
- A国の大統領は狡猾老獪な政治家だと評判だ。交渉事では絶対負けないと言われているよ。