「気持ちを汲む」とは?
「気持ちを汲む」は、(きもちをくむ)と読みます。「汲む」という漢字は、読み方も意味も少々難しいかもしれませんが、そこがわかれば、この言い回しは理解しやすいものとなるでしょう。
「汲む」には、水などを掌(てのひら)や器を使ってすくい取る、茶や酒などを器につぐ、または、ついで飲む、思想や学説などの流れを受け継ぐという意味があります。
上記の意味のほかに「気持ちを汲む」の「汲む」は、人の心の内をおしはかる、立場や事情などを察して思いやることを意味します。したがって、「気持ちを汲む」は、相手の気持ちや意向、事情などを推察して、理解し、慮る(おもんぱかる)ことを意味します。
「気持ちを汲む」の使い方
「気持ちを汲む」を使う場合の大きなポイントは、単に他者の気持ちを推察するだけではなく、慮る、理解する、思いやるなどのポジティブな心情が付随する点にあります。
ただ推察するだけなら、そこに反感などの否定的な反応や感情が伴うこともあり得ます。しかし、「気持ちを汲む」にネガティブな感情を含ませて用いることはありません。
また、「気持ちを汲む」は、相手が自分の思いを表明していない時に、こちらがその思いを推察することであり、それが的を得ているか否かは別の話です。相手が気持ちを表明している場合は、「気持ちに添う」などのように使います。
「気持ちを汲む」の例文
- 裕美さんはとても内気な性格なので、彼女の気持ちを汲んでグループ旅行に積極的に誘うことは控えた。
- 念願のカフェをオープンさせた友人の気持ちを汲み、頼まれずとも知人に宣伝してまわった。
- このプロジェクトを成功させたい課長の気持ちを汲んで、課員全員が一丸となって業務を遂行した。
「気持ちを汲む」の類語
明確な自己主張がごく自然な国もある一方で、日本では、自分の意見をずばりと表明することをためらう風潮が長く続きました。そのためか、「気持ちを汲む」の類語や類似表現は実に多彩です。
「心を汲む」という言葉は、他人の心のなかを推察して思いやる、気持ちを察するという「気持ちを汲む」とまったく同じ意味の言い回しです。以下では、その他の主な類語や類似表現とその例文を紹介します。
慮る
「慮る」は、「おもいはかる(思い量る・思い計る)」の音変化で(おもんぱかる)もしくは(おもんばかる)と読みます。周囲の状況や他者のことをあれこれと深く考える、思いめぐらすことを意味する言葉ですが、その根底にあるのは思いやるという心情です。
単に思いめぐらせたり思いやるだけではなく、大抵の場合、その結果としての行動も伴うかたちで用いられます。その場合は、~を慮って~するなどの言い回しが一般的です。
【例文】
- 一人暮らしの母の寂しさを慮って、一週間に一度は電話をしたり訪ねたりしている。
- 経営が悪化する店が多い商店街の状況を慮れば、協賛費の値上げをするわけにもいかない。
胸中を察する
「胸中を察する」(きょうちゅうをさっする)とは、他者の胸のうちをおしはかり、同情したり思いやることを意味します。「察する」は、推し量って考える、思いやる、同情するという意味であることから、「胸中を察する」も類語と言えるでしょう。
【例文】
母親と死別した生徒の胸中を察し、母の日に会わせた授業参観は取りやめにした。
斟酌
「斟酌」(しんしゃく)には大きくわけて三つの意味がありますが、「気持ちを汲む」の類語としての意味は、他者の事情や心情をくみとること、くみとって手加減することが該当します。ただし、手加減するという部分は、「気持ちを汲む」の内容の一部にすぎません。
【例文】
鈴木課長は、部下の山田氏が病み上がりであることを斟酌して、彼の仕事量を減らすことにした。