「冴えない」の意味とは
「冴えない(さえない)」とは、なんとなく物足りない、暗い、つまらない、パッとしないといった意味の言葉です。動詞「冴える」の未然形に打消しの助動詞「ない」がついたものが「冴えない」ですから、「冴える」の意味についても見てみます。
「冴える」の「冴」は、氷の結晶を表す「冫(にすい)」と「互」が組み合わさって、氷が両側から張りつめて固くつくさまから、かたまる、こおる、ふさがるという意味の「冱」が変化した漢字です。そこから「冴える」は、「冱える」とも書く多義語で、主な意味は以下の通りです。
- 寒さが厳しい。冷え込む。
- 空気が澄んで、はっきりと見える。
- 楽器の音などが、はっきり聞こえる。
- 色や顔色、表情などが鮮やかに見える。
- 心身の調子がいい。
- 技量が優れている。
- (打消しの語がついて)パッとしない。不満がある。
以上のような「冴える」の意味を打ち消し、否定する言葉が「冴えない」ですが、主に4から7の意味で使う場面が多く、7の意味は、その他の意味の中に含まれていることが多い表現です。
「冴えない」の使い方
「冴えない」は、人の顔色や表情によく使います。誰しも、その日の体調や気分によって表情などが、「冴えない」時があります。また、顔つきや雰囲気、ファッションなどにも「冴えない」を使います。
さらに、学校の試験やスポーツの成績などにも「冴えない」が使われますが、そこには、不満があるとかパッとしないといった気持ちが含まれています。以下では、人の様子とそれ以外のものに分けて例文をご紹介します。
人の様子に関する「例文」
- Aさん、朝から顔色が冴えないけど、何か心配事があるの?
- 毎日会社訪問をしているが、まだ内定が一つももらえず、このところ息子の表情が冴えないようだ。
- 部長は、健康診断の結果が悪かったらしく、一日中冴えない顔をしていた。
- 百貨店の食料品売り場にいた店員が、冴えない顔つきをしていたので買う気が失せてしまった。
- この推理小説に登場する探偵は、冴えない風貌に似合わず、切れ者で鮮やかに事件を解決する。
その他の「例文」
- 期末試験の成績が冴えなかったので、次はよっぽど頑張らないといけない。
- 今日の横綱は、技が冴えないだけでなく、覇気がなかった。
- 一日中、冴えない天気で、気分まで暗くなるようだ。
- 大将、今日は包丁さばきが冴えないね。なにかあったのかい。
- この著者の評論はいつも切れがいいことで評判なのに、今回は冴えない内容で面白くなかった。
「冴えない」の類語
「いまいち」
「いまいち」は、「イマイチ/今一」などとも表記します。「今一つ」の口語的表現で、思い通りにいかず不満だ、何か少し足りない、もう少しといった意味の副詞です。「冴えない」とほぼ同じような使い方ができますが、砕けた表現でしょう。
【例文】
- このところ残業続きで体調がいまいち良くない。
- 答案は全部書けたけど、いまいち自信がない。
- 精密検査の結果はいまいちだったが、無理しなければ勤務を続けてもいいそうだ。
「野暮」
「野暮(やぼ)」は、世の中の事情に暗いこと、気が利かないこと、人の心情や物事の趣を理解しないことですが、「冴えない」の類語としては、センスが悪いこと、洗練されていないことを意味しています。冴えないファッションを、野暮なファッションと言い換えても通用しますね。
【例文】
- 大学の卒業式では奇抜な衣装で出席する人もいるが、野暮な格好で出席した彼は、もっと目立っていた。
- お気に入りの帽子を被ってデートに行ったら、彼から野暮ったいと言われて腹が立った。