「まごうことなき」とは?
「まごうことなき」は、疑う余地のない、明らかな、ほかのものと取り違えることがない、などの意味をもつ言葉です。
「まごう」も「なき」も、現代ではほとんど使われることのない言い回しのため、「まごうことなき」は、とくに若い世代には馴染みが薄いかもしれません。
とはいえ、書き言葉のなかではまだ生き残り、会話の中であってさえ、時には冗談めかした大仰な言い方として使われることもあります。
漢字表記
「まごうことなき」は、漢字では「紛うこと無き」と書きます。「紛う」は「まがう」と読む方が多いかもしれませんが、音便変化して「まごう」と読むこともあります。
「紛う」はまぎらわしいという意味ですから、「まごうことなき」は「まぎわらしいことがない」ことを表しているのです。
「紛う方ない」とは
「まごうことなき」に似た表現に「紛う方ない(まがうかたない)」があります。意味は同じく、疑いようのない、確かなさまです。しかし、「紛う方ない」の方がおおもとの意味であるとされています。
「まごうことなき」の使い方
「まごうことなき」は、疑いようのない、間違えようのない、という強い確信のもとに使われます。自分だけではなく、誰の目からも明白であったり、確実な証拠や論拠があるときの言い回しとして理解しましょう。
例文
- 札幌の郊外の道をのし歩いていたのは、まごうことなき、大きなヒグマだった。
- 化石マニアの少年が山中で掘り出したのは、まごうことなき恐竜の背骨の化石だった。
- 殺害現場に落ちていた凶器のナイフから検出された指紋により、Aはまごうことなき犯人として逮捕された。
- 絶対音感と歌声にこめられた情感の豊かさで、少女はまごうことなき天才歌手と認められた。
- 「このスープ、最高だよ。君は、まごうことなき名シェフだ!」
「まごうことなき」の類語
紛れもない
紛れもない(まぎれもない)は、「まごうことなき」を現代の日本語で言い換えたともいえる言い回しです。ゆえに、「まごうことなき」と同様、疑う余地のない、明らかな、という意味をもちます。
【文例】
- 山田君が腕利きの美容師であることは紛れもない事実なのだから、そろそろ独立を許してやれよ。
一目瞭然
一目瞭然(いちもくりょうぜん)は、「一目見ただけではっきりと分かるさま」という意味です。「瞭然」は難しい言葉ですが、はっきりと疑いのないさま、明白確実であること、という意味を持ちます。
【文例】
- パリコレのランウェイを颯爽と歩くミユキの姿は、一目瞭然、超一流のモデルだった。
相違ない
相違ない(そういない)は、確かである、確実である、という意味です。現代の日本語においては、「~に相違ない」という用い方が一般的です。「まごうことなき」「一目瞭然」などに比べると、若干断定が弱めのニュアンスです。
【文例】
- パンダは、依然として動物園の人気ナンバーワンであることに相違ない。
文句なしに
文句なしには、苦情や文句をいう余地なく、議論の余地なく、という意味です。
【文例】
- 君は、文句なしに、最高の母親として子育てしてくれているよ。
「まごうことなき」の英語表現
「まごうことなき」の英語表現は、undoubtedが適当です。「undoubted ~」で、「疑う余地ない(確実な、明らかな)~」という意味を表すことができます。
例文
- He has an undoubted talent as a baseball player.【訳:彼は、野球選手としてまごうことなき才能を持っている】
- You have to show us undoubted proof.【訳:君は、私たちにまごうことなき証拠を見せてくれねばならない】
「まごうことなき」のまとめ
あえて古典を読む人も少なくなった昨今、現代に残る古来の日本語は、とても貴重な存在です。口にし、書くことで、言葉は次の世代にも残ることができるでしょう。今回をきっかけに、あなたも「まごうことなき」をどこかで使ってみませんか?