「遅まきながら」とは
「遅まきながら」とは、「時機に遅れてしまったけれども」という意味です。名詞「遅まき」に接続助詞「ながら」が付いた形で、後ろに続く「行為」に対しての前置きとして用いられます。
「遅まき」とは「時季に遅れて種子をまくこと」あるいは「同種に比べて種をまく時期が遅い品種のこと」を意味する言葉です。「種子」が語源なので漢字では「遅蒔き」と書きますが、「蒔く」は常用漢字ではないため、通常は「遅まき」と表記されます。
なお、「遅まきながら」は、一般的な基準より遅れてスタートする‘今さら感‘を含む言葉ですので、自分自身の行為に対してのみ用います。「遅まきながらお祝いを…」など他人に対する行為に対して使うことは失礼にあたるので、注意が必要です。
「遅まきながら」の用例
- 結婚20周年を記念して海外旅行に行くので、遅まきながら語学の勉強を始めている。
- 日本選手の活躍が度々報道されているのを見て、遅まきながらラグビーに興味を持った。
- 遅まきながらスマートフォンを購入したので、基本的な使い方を教えてくれないか。
「ながら」の意味
行為に対する前置きとして「遅まき」を用いる時は、常に「ながら」とセットになります。「ながら」は接続助詞で、主な用法は以下の4つです。
- その動作をするのと同時に他の動作を行うの意を表す。…しつつ。(例:飲みながら話す)
- 両立しにくい二つの事態が同時に成り立つ意を表す。…にもかかわらず。(例:貧しいながらも幸せだ)
- そのまま変化しない状態で続く意を表す(例:涙ながらに訴える)
- 全部、の意を表す。…ともども。(例:親子ながら、けんかっ早い)
「遅まきながら」の英語表現
「遅まきながら」という言葉は日本語特有の表現です。そのため、その心情を的確に表す英語表現を見つけるのは容易ではありません。
時間的な遅れを表現するには、”a little late(少し遅い)”や”too late(遅すぎる)”を使います。また「今頃になってやっと」と表現するには、”now after all this time”や”belatedly”を用いると良いでしょう。
しかし、それらの表現には「遅まきながら」のように‘自分自身の行為に対して使う‘というような使い分けがありません。そのため、「遅い」と思う対象が自分自身の行為であることを同時に伝える必要があります。
また英語のことわざを用いて伝える方法もあります。”better late than never”これは「It’s better to do something late, than to never do it」の省略形で「遅くても、しないよりはましだ!」という意味です。
「遅まきながら」の類義語
「遅まきながら」と似た言葉で、「遅ればせながら」という表現があります。どちらも「遅れてしまったけれども」という意味を持つ点は一緒なのですが、使われ方には明確な違いがあります。
先述のとおり、「遅まきながら」はタイミングが遅れてしまった自分の行為に対してのみ使います。対して「遅ればせながら」は、目上の人との会話などかしこまった場面でも使われる言葉です。
なぜ「遅ればせながら」が目上の人との会話に用いられるか、その理由は「遅ればせながら」という言葉の由来にあります。
「遅ればせ」とは
「遅ればせながら」の「遅ればせ」は、「遅れ馳せ参じる」という言葉がもとになっています。「馳せ参じる」とは戦国時代の主に対する忠誠心の強さを表す言葉のひとつで、「大急ぎでかけつける」という意味です。
そこに「遅れ」が生じてしまったのでは大問題。「申し訳ない」という恐縮の気持ちを込めて用いられるのが「遅ればせながら」です。
ちなみに、人より先に事を行うことを「先走る」と表現します。この「先走る」も、戦国時代に使われた言葉の名残だと言われています。