「語るに落ちる」とは?
「語るに落ちる(かたるにおちる)」とは、質問されたり、問い詰められていたりするときには、警戒しているのでなかなか隠し事を話してしまうことがないけれど、自分から話をしているとついうっかりと口を滑らせて隠し事を話してしまう、という意味の言葉です。
もともとは「問うに落ちず語るに落ちる」
「語るに落ちる」は、「問うに落ちず語るに落ちる(とうにおちずかたるにおちる)」ということわざを略したものです。
「問うには落ちいで語るに落つる」、「問うに落ちぬは語るに落つる」、とも言います。
「落ちる」とは?
「落ちる」という言葉には、文字通り落ちる(落下する)という意味を始め、その場所から離れる、落ちぶれるなどたくさんの意味があります。
問い詰められて自白したり、本音を吐いたりするときにも「落ちる」という言葉は使われており、「語るに落ちる」では、この「白状する」という意味で使われています。
警察用語では、自白する・自供するという意味で「落ちる」が使われています。「完落ち(かんおち)」は容疑者が犯行を全面的に自供すること、「半落ち(はんおち)」は犯行の一部を自供していることを指す警察用語です。
「語るに落ちる」使い方
- お父さんのお湯のみを割ってしまったのは誰か、問い詰めたときには誰も白状しなかったけれど、食事中にさりげなく飲み物の話を振ったら弟がつい話の流れで自分から白状してしまった。語るに落ちたね。
- 最近彼氏ができたらしい友達に、どんな人なのか聞いても教えてはくれなかった。でも、洋服の好みが変わってかわいくなったね、と言ったら、服の話をしているうちにこれが彼の好みだと語るに落ちてしまい、すっかり彼がどんな人なのかわかってしまった。
「語るに落ちる」の誤った使い方
前述のように、「語るに落ちる」は、「問うに落ちず語るに落ちる」ということわざの前半が略されています。そのため、「落ちる」のイメージに惑わされ、「語るに落ちる」を「語る価値もない、つまらない」という意味で誤用する例が見られます。
また、このように誤用されるときに、「語るに落ちない」と、「落ちる」を否定する例も見られますが、この使い方も誤りです。
【誤用の例】
- 試験でいい点を取りたいからって、ちょっとわからないところをカンニングしてしまうなんて、あいつも語るに落ちたやつだ。
- 今朝、鈴木さんが電車でお年寄りに席を譲っているのを見たよ。派手な外見で誤解していたけれど、鈴木さんって、語るに落ちない人だったんだね。
「語るに落ちる」英語での表現
「語るに落ちる」に当たる英語での表現には、次のようなものがあります。4.と5.は比喩的な表現です。
- to let slip a secret(秘密をうっかり漏らしてしまう)
- inadvertently reveal(うっかり暴露してしまう)
- He who excuses himself accuses himself.(弁解する人は、自ら告発する。)
- to let the cat out of the bag(猫を、ついうっかりカバンから出してしまう)
- The tongue is ever turning to the aching tooth.(舌は、いつも痛んでいる歯のところへ行く。)
落語での「語るに落ちる」
「語るに落ちる」が効果的に使われているのが、落語『四段目(よだんめ)』です。『四段目』は古典落語の演目の一つで、上方では『蔵丁稚(くらでっち)』と呼ばれています。
『四段目』あらすじ
丁稚の定吉が、使いに行ってなかなか帰ってこないことが続いているのを気にした旦那。調べると、芝居が大好きな定吉は、使いのたびに芝居を見に行っているようです。
ある日、やはり使いに行ってのんびり帰ってきた定吉を旦那が捕まえ、何をしていたのか問い詰めますが、定吉はのらりくらりとかわします。旦那が機転を利かせ、歌舞伎の『忠臣蔵』の下っ端が演じる役を大物俳優が演じると聞いた、と嘘をつきます。
定吉は、そんなわけがない、だって今見てきたところなんだから、と「語るに落ちて」しまいます。下っ端が演じる役を演じる大物俳優が誰なのかは、江戸歌舞伎か上方歌舞伎かによっていくつかのバリエーションがあります。