「アングラ」とは?
「アングラ」の意味は以下の3つです。いずれも、本流、公式、まっとう、大衆、一般的、などの言葉とは逆のベクトルのものばかりです。
- 商業性を考慮せず、独自の主張をする実験的、前衛的な芸術、またはその作品。
- 非合法、非公式であること。
- 出所不明であること。
「アングラ」は「アンダーグラウンド」の略語で、英語のundergroundに由来します。undergroundには「地下(の・で)」のほかに、「こっそりと・隠れて」などの意味があります。
次の項から、三つの意味を詳しく見ていきましょう。
芸術における「アングラ」
映画・演劇・舞踏などの文化や芸術における「アングラ」の起源は、1960年代の米国にあります。「アングラ」は、権威、権力、旧来の社会体制への反発などの批判精神に基づくものでした。
そもそも一般大衆に広く認知されることを目的としていないので、商業性の否定につながるのは自然なことですね。「アングラ」は、やがて、カルチャーの主流に反発する、独自の世界の追求へとつながり、前衛化していきます。
このとおり、主流に背を向ける個の追求が「アングラ」の基本精神です。とはいえ、寺山修司のアングラ劇団「天井桟敷」のように、芸術のジャンルとして商業活動に結び付くケースもあります。
非公式・非合法の「アングラ」
非公式・非合法の「アングラ」とは、法律などの公的な管理が行き届かない世界のことです。非公式な例として「アングラ新聞」「アングラ放送」など、非合法の例として「アングラマネー」「アングラ経済」などが挙げられます。
金銭についての「アングラ」は、脱税、密輸、薬物販売や風俗営業をはじめとする暴力団による非合法な経済活動などを指します。これらはブラックマネーとも呼ばれる社会問題のひとつです。
また、インターネットの世界では、違法行為指南のサイトを「アングラサイト」「UG」などと呼んでいます。かつてはアングラ文化の一翼とも見られましたが、法規制が進んだ現在では、このような非合法なサイトの運営や利用はネット犯罪とみなされています。
出所不明の「アングラ」
出所がわからない資金を「アングラ資金」と称します。限りなく怪しさが漂いますが、単に「不明」である限りは、まだ違法の段階ではありません。
「アングラ」の使い方
芸術・文化における「アングラ」は、多くの場合、ポジティブな表現です。主流になれないのではなく、あえて主流を選ばずに独自路線を貫く矜持があるジャンルといえるからです。前衛的で分かりにくい場合もありますが、芸術性の高さが見られる場合も多々あります。
非公式・非合法の「アングラ」、出所不明の「アングラ」は、ネガティブな表現です。よって、主流の経営ノウハウに頼らず、合法的な独自の経営哲学で成功した人の富を「アングラマネー」などと呼べば、名誉棄損に問われるかもしれません。
例文
- 若い頃は大衆的なものが俗に見えて、アングラ演劇やアングラ映画に通い詰めたものだ。
- インターネットのアングラサイトは、今や第二の闇社会となっているね。
- 友人の会社で働かないかと誘われているのだが、アングラ資金で起業した様子に不安を感じ、断わることにした。
「アングラ」と「サブカル」
「サブカル」とは
「サブカル」とはサブカルチャー(subculture)の略語です。英語のsubcultureは、社会の伝統的・支配的な文化(main culture)に対して、その社会の中にいる特定の集団だけが持っている独自の文化を指します。大雑把に言えば、大衆文化・若者文化のことです。
一方、「サブカル」(日本語のサブカルチャー)は定義が曖昧で、大衆文化・若者文化だけでなく、アニメや漫画などに代表されるオタク文化を指すこともあります。
「アングラ」と「サブカル」の違い
「アングラ」と「サブカル」は、芸術や文化においては重なる部分があります。とはいえ、後者の文化は、いまや影響力、商業面ともに主流のカルチャーをしのぐケースが続出しています。
一方、「アングラ」はあくまで反主流の存在です。アングラ芸術やアングラ文化に分類されていたものが主流となった場合、「アングラ」ではなくなってしまうのです。