「ダメ押し」とは?
「ダメ押し」を漢字表記すると、「駄目押し」です。この言葉は大きくわけて下の2つの意味を持ちます。
- 間違いないとわかっていても、相手に後で言い逃れなどさせないように、なお念を入れて確かめること。
- (野球などで)勝敗の大勢が決した後、さらに得点して勝利を確定的にすること。
語源、由来から考えると1の意味が本来の意味と考えられますが、現在では2の意味で使用されることの方が多いようです。
「ダメ押し」の語源
「ダメ押し」=「駄目押し」は、元々は囲碁の用語です。囲碁は、端的に表現するならば陣取りゲームの一種なのですが、勝負がついた段階でも、盤上のすべてに石が置かれているわけではありません。
囲碁の勝負がついた段階で、どちらのものでもない部分のことを「駄目」と呼び、勝敗をわかりやすくするために「駄目」に石を置く行為を「駄目押し(駄目詰め)」と言います。
ここから転じて、「念を入れて確かめる」ことを、「駄目を押す」「ダメ押し」などと表現するようになりました。更に、「勝負がついた状態で、とどめとなる一撃を加える」という意味が派生したのです。
「ダメ押し」の例文
- 口約束はしたが、まだ本契約は結べていない。ダメ押しの電話を入れて確認しておこう。
- 「本当にその日に決行するんだね?」彼は、最後にダメ押しをするかのように質問してきた。
- 1点リードのまま迎えた8回表、4番の山田選手の満塁ホームランがダメ押しとなった。
最初の2つが「念を入れて確認をする」という意味での用法、最後の1つが「勝利を確定的にする」という意味での用法の例です。
スポーツにおける「ダメ押し」
日常生活の中で、「ダメ押し」という言葉を耳にする機会があるとすれば、その多くがスポーツ関連のニュースではないでしょうか。
野球やサッカーなどの球技では、ポジティブな意味で用いられることが多いのですが、相撲では、ネガティブな扱いを受けることが多くなります。この違いについて、少し考察してみます。
野球・サッカーでの「ダメ押し」
野球やサッカーでいう「ダメ押し」とは、「勝負を決定づけるような得点場面」を指します。あくまでも「決定づけるような得点」なので、いわゆる「決勝点」とは異なります。
野球は、原則として9回の表裏の得点合計を争う競技なので、仮に9回表終了時点で10点差でも、9回裏に逆転勝利をおさめることは可能ですが、選手の立場で考えれば、相手の大量リードのまま試合の終盤にさしかかれば、「勝利」を信じ続けることは難しくなります。
サッカーのように試合時間が規定されているスポーツでは、得点差が開いて終盤を迎えたときに追加点を入れられると、「勝負を決定づける(相手の反撃の意思を奪う)ような得点」、つまり「ダメ押し」と言えるでしょう。
相撲での「ダメ押し」
相撲で言う「駄目押し」とは、「相手が土俵を割ったり土俵上に手をついたりした後」、つまり、勝敗が確定した後に、さらに相手を押したり倒したりすることを指し、無駄な行為です。
さらに言えば、勝負がついたと思って力を抜いている相手を押したり倒したりするわけですから、相手力士や土俵際の審判や観客が怪我をする恐れすらあり、危険行為としてこれまでに度々非難されていますし、支度部屋に「ダメ押し厳禁」の張り紙が貼られたこともあります。
また、「相撲は、格闘技かスポーツか」という議論がありますが、「格闘技」として考えても既に勝敗がついているわけですから、「ダメ押し」は、「残心(武芸で、一つの動作を終えたあとであっても緊張を持続する心構え)」とは違う話と言えるでしょう。
「ダメ押し」の捉え方・評価
相撲については、上記に記した通りですが、野球やサッカーでの「ダメ押し」は、あくまで選手の「戦意」の問題であり、「勝負には全力を尽くすのが礼儀」と考える人の多い日本では、「ダメ押し」が非難されたり、問題になることは多くありません。
しかし、MLB(メジャーリーグベースボール)などでは、大量得点差がついているときに盗塁は控えるというような「暗黙の了解」が存在します。