「懸念」の意味とは?
「懸念(けねん)」の意味は以下の3つです。
- 気になって心から離れないこと。先行きを不安に思うこと。
- (仏教において)ある対象に心を集中させること。
- (仏教において)執着すること。執念。
日常でよく聞く「懸念」は、1の意味で使われています。「――する」の形でサ行変格活用の動詞として用いられることもしばしばあります。2と3の意味は仏教用語であることから、解説は割愛し、今回は紹介のみとします。
「懸」「念」の字義
「懸」は、音読みで「ケ」「ケン」、訓読みで「か-かる」「か-ける」と読みます。「心が宙吊りになって定まらず、気がかりなこと」を表す漢字です。なんとなく不安な感じが伝わってきますね。「懸念」の他には、「懸案」や「懸命」といった熟語があります。
「念」は、音読みで「ネン」、訓読みで「おも-う」と読みます。ここでは、「思い」や「考える」という意味を表します。「念願」や「残念」といった熟語は、比較的なじみがあるでしょう。
それぞれの字義を組み合わせると、「気がかり」という「懸念」の意味が浮かび上がってきます。
「懸念」の使い方
「懸念」は、良くない結果が予測され、先行きが心配だ、という時に使います。良い結果、望ましい結果になりそうだ、という場合には相応しくありません。
たとえば、「長雨の作物への影響が懸念される」は、「不作になることが予測される」ので適切な使い方ですね。では、「猛練習の成果が懸念される」はどうでしょう。「猛練習のおかげで好結果が予感できる」のですから、この場合は「期待できる」としたほうが自然ですね。
例文
- 長期的な個人消費が落ち込むことで、日本経済全体への深刻な影響が懸念されます。
- リゾート開発事業の住民説明会が行われたが、一部の参加者からは環境に対する懸念の声が上がった。
- 多くの企業で在宅勤務が推奨される中、情報流出のリスクが懸念されている。
「懸念」の類語とは?
「懸念」の類語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 不安(ふあん)…気がかりなこと。今後起こる事態を恐れること。
- 心配(しんぱい)…何か起こるのではないかと気にかけること。
- 憂慮(ゆうりょ)…不結果を予測して心配すること。
- 危惧(きぐ)…悪い結果になりはしないかとあやぶむこと。
- 鬼胎(きたい)…心の中でひそかに抱いているおそれ。
これらのうち、特によく知られているのは「不安」と「心配」でしょう。前項の例文にある「懸念」と入れ替えても、ニュアンスに大きな違いはありません。しかし、言葉としてはやや軽い印象を受けるかもしれません。
「憂慮」も、先に紹介した2つと似た意味ですが、少し堅い感じのある言葉ですね。「懸念」と並んで、ニュースなどのフォーマルな文章に適しているでしょう。
また、「危惧」にはおそれるという意味が含まれています。「不安」や「心配」に比べ、より現実的で、切迫しているようなイメージです。
「懸念」を英語で表すと?
「懸念」を、英語で表した場合の例文を紹介しておきましょう。どちらも、「心配」や「気がかり」といったニュアンスを含んでいます。
【例文】
- There is concern about direction of world economy.(世界経済の先行きに懸念がある。)
- There is nothing for me to worry about.(私が懸念するようなことは何もない。)
- We are worried about our grandfather's conditon.(私たちは、祖父の健康状態を懸念している。)