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「窓際族」とは
「窓際族」とは実質的に仕事をさせてもらえないサラリーマンのことを揶揄する言葉です。特に年功序列制により管理職などについているにも関わらず仕事をさせてもらえない中高年を指すことが多いです。
- 「窓際族」は勤務時間中もパソコンでソリティア(トランプゲームの一種)ばかりしている。
- 担当していた事業部が廃止になり別部署に配属になって「窓際族」のような扱いを受けている。
「Windows 2000」とは
マイクロソフト社が2000年にリリースしたパソコンOSです。「Windows」が「窓」であることから転じ、かつ「2000」を「年収2000万円」に例えて、高年収を得ている「窓際族」を揶揄する言葉として使われます。必ずしも年収が2000万円を超えていることは意味しません。
「窓際族」が生じる企業内的な背景
企業内の仕事は、えてして「仕事ができる人に仕事が集まる」ことになりがちです。逆に仕事ができない人に仕事を任せても失敗が多かったり、教える手間がかかる場合があります。
通常、業務がうまくこなせない場合は社内研修などを行うべきですが、「窓際族」はそれが行われることなく社内事務所の端=窓際へと追いやられることになります。
「窓際族」が生じる経済的背景
「窓際族」という言葉が使われ始めたのはバブル崩壊以前のようです。好景気により、企業に仕事ができない社員を管理職として抱える余裕があったことが背景の1つとして考えられます。
不況期になり年功序列が維持されなくなっても、以下のような事情により「窓際族」を完全になくすことは難しいと考えられます。
「窓際族」が生じる法的な背景
労働者は雇用主である企業より弱い立場にあることから、労働法により保護されています。その中の1つに解雇要件があります。
労働契約は契約の一種です。契約は双方の合意の元に行われます。片方が合意しなければ契約を維持する必要はありません。
しかし企業側からの一方的な契約解除である解雇は、就業規則の重大な違反、重大な犯罪を犯した場合などを除き、新規採用の停止など「解雇しないための企業努力」をした上で、かつ「やむを得ない場合」でしか行えません。
以上のように社員を解雇することは企業にとってかなり難しいものとなっています。そのため仕事ができない社員がいて、企業にその社員を再教育する余裕がなくても、雇用を維持せざるを得ません。
「希望退職」とは
いわゆる「リストラ」の1つの方法として「希望退職」を募る方法があります。「希望退職」は単に社員が退職を希望することでなく、企業が退職金を多く支払うなど行うことで、人員整理を行います。双方の合意である点が解雇との違いです。
ところが「希望退職」は「他社でも仕事ができる」といった能力がある社員が応じる場合がある一方、企業側が退職してほしい「窓際族」が「希望退職」に応じるとは限りません。
そもそも「窓際族」は現在の職場で業務が十分に行えないのですから、転職先で新たな仕事をうまくこなせる可能性は低そうです。
「窓際族」から「追い出し部屋」へ
日本経済が不況に陥ると企業は「窓際族」を抱える余裕はなくなります。人員整理のために「希望退職」を募っても「窓際族」が応じるとは限りません。
そこで行われることになったのが「追い出し部屋」と呼ばれる手口です。これは通常の業務を行う場所でなく、別の部屋に席を置かれるなどすることから名付けられました。
「追い出し部屋」では仕事が与えられないだけでなく、パソコンが与えられないなど、「なにもすることができない状況」に追いやられます。それに社員が耐えきれず退職を申し出ることを狙った手口です。
「追い出し部屋」の他にも、面談などを繰り返し行い「あなたはこの会社に必要とされていない」「あなたに与えられる仕事は何もない」などと執拗に伝える手口もあります。
これらは労働者に精神的苦痛を与える行為ですから民法上の不法行為にあたり、精神的苦痛を与えたことなどによる民事訴訟や慰謝料の対象となります。さらにその情報がSNSやマスコミなどで伝わると「ブラック企業」の烙印を押されることになります。
「即戦力」問題
企業が「窓際族」を抱える余裕がなく、さらに合法な「早期退職」でも解消せず、違法な「追い出し部屋」といった手口が使えないとなると、そもそも「窓際族」になりそうな人は採用しないということになります。これは新卒採用等において「即戦力」といった言葉が使われるようになった背景とも考えられます。
その上、日本は新卒一括採用として業務能力の有無が不明なまま採用している一方で、海外企業が新卒一括採用を行っていないことが広く知られるようになると、そもそも日本の雇用慣習自体に疑問が向けられるようになっています。
「窓際族」まとめ
以上のように「窓際族」が生じる背景には本人の責任や能力の問題、企業内の問題や経済・法的な問題が複雑に絡み合っています。社員は企業に貢献することを心がけ努力し、企業もまた仕事ができない社員を放置しないことが重要に思えます。