「ダイバーシティ」の概要
「ダイバーシティ」(diversity)とは、「多様性」のこと、すなわち、いろいろな異なる性質を持つものが、幅広く存在するさまという意味の言葉です。
なお、「多様性」ではなく無線技術としての「ダイバーシティ」については、記事の最後に解説します。
「diversity」について
「diversity」は、英語の「diverse」(種々の、雑多な、いろいろな)の名詞形であり、「di-」(離れて)と「vers-」(回る、変える、向く)により、「別々に離れていくこと」の意です。
さまざまな要素が、一か所・一方向にまとまらず、別々の方向へ離れていきながらも、大きな目で見ればひとつの場所に混在している、とイメージすればわかりやすいのではないでしょうか。
当然ながら、「ダイバー」(diver:水夫)や「シティ」(city:街)とはまったく関係ない言葉ですので、念のため注意しましょう。
「ダイバーシティ」(多様性)の使い方
「ダイバーシティ」という言葉は、一般的には、自然界(生物種や遺伝子)か、人間社会(人種、宗教、国籍、思想など)の多様性に言及する場合に使われるケースが多いようです。
例えば自然界では、数多くの生物種が食物連鎖の中で相補的にお互いを支え合い、自然世界を成立させています。何らかの原因で生物種が減少し、多様性がなくなると、他の生物種も生存できなくなり、ひいては地球環境そのものが危機にさらされます。
同様に人間社会でも、自分(たち)と性質が異なるものを排除・隔離してしまうと、異なる価値観が受け入れられず、社会構造が硬直してしまうという認識が広まっており、社会的議論などでは「ダイバーシティの尊重」がしばしば取り上げられます。
例文
- 環境開発が進む都市部では、土着の生物のダイバーシティが急激に減少しつつある。
- 人口減少が進む国では、女性やお年寄りの働き手も積極的に採用して、ダイバーシティのある社会をつくることが特に重要だ。
- あの企業では人材のダイバーシティ確保に力を入れており、優秀でさえあれば、経歴や学歴や国籍なども問わず、さまざまな価値観を持った人々をさまざまな方法で登用している。
「ダイバーシティ」(多様性)にまつわるメリット・デメリット
メリット
「ダイバーシティ」が十分である社会環境では、どのような個性・特性を持った人でも活躍できる機会が与えられ、適材適所でその能力を生かすことができるでしょう。
画一化され、固定された構成員しかいない社会(集団)に比べ、出力が多様化しやすく、問題に際しても柔軟に解決策を考えることができます。
また、個々人の視点に立っても、生き方や働き方を他者から強制されることなく、自分自身のありかたを認められますから、心理的な安定感につながると考えられます。
デメリット
「ダイバーシティ」の追求は、必ずしもメリットばかりではありません。性質が違う者たちが同じ場所に集うということは、必然的に対立を生みやすく、必要な協力や連携が難しくなる場合があります。
また、物事の平等な評価が難しくなり、理不尽感や不平等感の温床となることも珍しくありません。例えば、少数派(マイノリティ)だからと言って無条件に優遇され、そのための資源を多数派が支払う社会は、多くの人が理不尽に感じるでしょう。
「ダイバーシティ」の名の元に何を主張しても良いわけではありません。どのような方法で「ダイバーシティ」を尊重すべきなのかは、現状の社会を踏まえ、慎重に議論していく必要があると考えられます。
無線通信技術としての「ダイバーシティ」
「ダイバーシティ」は、無線通信の用語では「複数のアンテナで無線信号を送受信することにより、通信の信頼性向上を図る技術のこと」を意味します(「多様性」の場合と同じ「diversity」に由来します)。
例えば、高いビルが立ち並ぶ場所で、スマートフォン(や携帯電話)で電話を受けたとします。この時、送信点(基地局など)から直接スマホに届く電波もあれば、ビルに反射してからスマホに届く電波もあります。
こうした場合、二つの電波が異なる経路で到達するため、電波が干渉しあうことで通信の質が落ちることがあります。これを防ぐため、複数のアンテナを用意して信号が強いほうの電波を優先したり、信号をひとつに合成したりする技術がダイバーシティです。
例文
- 大手キャリアの携帯電話は、ダイバーシティ技術がしっかりしているので、通信が不安定になることは少ないと聞く。
- 電波干渉を受けやすい移動基地局のアンテナには、ダイバーシティアンテナが採用されている。