「彼岸花」の由来と特長
彼岸のころになると、何もないところから不意に燃えるような真っ赤な花を咲かせ秋の訪れを感じさせる「彼岸花」。この「彼岸花」はヒガンバナ科の球根植物。もとは中国から有史前に渡米してきた植物です。
鮮やかな紅色の花は輪になり、花びらは細長くふちが縮れて外側に強く反り返って、雄しべと雌しべは外に長く出ています。多年草で秋の彼岸の頃に花が咲くためこの名前が付けられました。
別名「曼殊沙華」(マンジュシャゲ)・「天蓋花」(てんがいばな)・「リコリス」。「曼殊沙華」の名の由来は墓地に咲くことが多く、仏典に伝わる赤い花の名からつけられたとされています。各地に俗名が多く「死人花」(しびとばな)・「仏花」・「幽霊花」・「葬式花」・「狐花」など千以上もあります。
日本では花は咲いても種子は実らず、球根が分かれて繁殖します。この球根に移動能力はなく、現在各地に見られる「彼岸花」はかつて人が移植した結果ということになります。
花が咲いている時期に葉はなく、花が終わると茎が崩れるように消え、その後秋から春まで濃い緑色の葉(光沢がある長さ30~60cmの線形)を茂らせます。これは他の草が枯れる時期に葉を実らせ光を浴びて、たっぷりと栄養を球根に蓄えるためです。
この球根には猛毒の「リコリン」が含まれており、花や葉も有毒です。飢餓に苦しみ彼岸花の球根を食べた人が嘔吐・下痢・痙攣を起こし、時には亡くなっていました。それでも昔、飢饉のときは砕いて水に充分さらして、でんぷんを精製してから食べていました。飢饉に備える救荒植物としても利用されていたのです。又、足の土踏まずに貼るとむくみを除く作用があると言われています。
「彼岸花」の仲間
「白い彼岸花」をよく目にしますが、この花は本当に「彼岸花」なのでしょうか?
正式な名前は「白花彼岸花」(シロバナヒガンバナ)・「白花曼殊沙華」(シロバナマンジュシャゲ)と言い、彼岸花の仲間になります。黄色い花をつける「ショウキラン」という花(彼岸花と同属の花)の間に生まれた雑種(交配種)とされています。「彼岸花」に比べて雄しべや雌しべが短いのが特徴です。
他にもヒガンバナによく似た「彼岸花の仲間」がいます。ヒガンバナと同じく有毒な花もあるため口にしないように気をつけましょう。よく知られている水仙やアマリリスも同じヒガンバナ科です。
「彼岸花」の花言葉
●「赤い彼岸花」の花言葉
「情熱・独立・再開・あきらめない・またあう日を楽しみに」
というポジティブな花言葉の一方で
「悲しい思い出・思うはあなた1人」もあります。
救荒植物、毒草と知られる「彼岸花」…。「悲しい思い出」は死者に対する想いでしょうか。毒草を食べなければならなかった「悲しい思い」からでしょうか
「白花彼岸花」の花言葉
●「白花彼岸花」の花言葉
「思うはあなた1人」「また逢う日を楽しみに」
何だか切ない花言葉ですね。
「彼岸花」の毒
「彼岸花」はパッとしない、いや不吉な名前を多く持つ植物です。こんな汚名を着せられたのは、やはり毒が関係しているのでしょう。しかし、その毒は人間にとって悪いことばかりではないのです。
その昔、大切な人の亡骸を土葬していたころ動物に荒らされないために毒のある「彼岸花」を植えたとされています。又、「彼岸花」は田んぼのあぜ道によく咲いています。これも昔からモグラよけとして毒が役に立つからでした。「彼岸花」は古くから人間に寄り添って生きてきた植物なのです。
「彼岸花」のまとめ
日本人は古くから「彼岸花」の怖い毒を活用して生き抜いてきました。名前から不吉なイメージを抱かれやすく、損している植物です。「綺麗な花には毒がある」とはよく言ったもので「彼岸花」も哀愁漂う妖艶な女性のようです。見た目に騙され毒を食べて「彼岸花」をお供えされないように気をつけたいものです。