「オーバーラップ」とは
「オーバーラップ」は、英語のoverlapに由来する外来語です。直接の意味は、以下の2つです。
- 部分的に覆う・重なる
- 部分的に一致する・2つ(以上)のものが部分的に共通性を持つ・かちあう
日本語として会話の中で使われるときには、もう少し限定的な意味を持ちます。代表的なものとしては、以下の3つが挙げられます。
- 映画の手法としてのオーバーラップ
- スポーツ(主にサッカーのプレーとして)のオーバーラップ
- 日本語表現の中のオーバーラップ
映画の手法としての「オーバーラップ」
映画などの映像作品の中で、画面切り替えの手法として使われます。前の画面が緩やかに消えるのに重なって、次の画面がだんだんと現れ、やがて完全に切り替わるというものです。
略してOLと書いたり、二重写しやディゾルブと言ったりもします。かつては回想シーンへの導入などで、よく使われていました。
随筆家・寺田寅彦の『映画芸術』(1932年)には
『映画芸術』は、映画の手法と日本の伝統芸術の手法を比較・考察した内容の随筆です。映画の手法という意味では、戦前から使われていた言葉のようです。
スポーツ(主にサッカー)の「オーバーラップ」
サッカーにおけるオーバーラップの解説として、まず用例を紹介します。
- 例)DF酒井が、効果的なオーバーラップとクロスで、相手ディフェンスを混乱させた。
この場合の「オーバーラップ」は、ボールを持っていない選手(主にディフェンダー)が、ボールを持っている選手を外から追い越して、攻撃に参加することを言います。
前線に数的有利な状況をつくったり、攻撃にスピードを加えたりすることで、相手のディフェンスを崩す戦術になります。
ヨットレースでも
セーリング競技規則(SRR)によると、先行艇の艇体および一番後ろと、後方艇の艇体および一番前が並んだ状態のことを言います。
日本語表現の中の「オーバーラップ」
2つのもの(記憶・体験・イメージ)が重なり合う、あるいは2つの現象・状況が同時に起こることを「オーバーラップ」と言います。
例えば
- ドラマのクライマックスが、往年の名曲とオーバーラップする。
- 規制緩和とオーバーラップする形で、経済が活性化した。
デジャビュ(既視感)と似ていますが、こちらは以前に経験したことがあるような(本当はない)印象のことを言うので、イメージ同士が重なり合うという意味は持ちません。
その他、専門用語としての「オーバーラップ」
実は他にも、それぞれ別の意味で「オーバーラップ」が使われる場面があるので、短く紹介していきます。
- 地形学:地層の相対的海進による重なりで、上位層が下位層よりも広く分布している現象を言います。
- 製品開発:製品の研究開発、製造、マーケティングの各段階を、重層的に進めていくやり方を、「オーバーラップ型製品開発」と言います。
- 医学:1人の人に、膠原病(こうげんびょう)の2つ以上の症状が重なった場合、重複症候群(=「オーバーラップ症候群」)と言います。
- エンジン:4ストロークエンジンにおいて、吸気ポートと排気ポートがどちらも開いているタイミングのことを「バルブオーバーラップ」と言います。
- 美容師:ヘアカラーや作業を重ねる・重複させることを「オーバーラップ」と言います。