「才気煥発」の字義
まずは文字の意味から見ていきましょう。
才気(さいき)
「才気」は「才知のはたらき」「素晴らしい頭のはたらき」を意味します。より具体的に言えば、「ものごとをすばやく理解し、適切な判断のもとに対応できる能力」ということになります。
煥発(かんぱつ)
「煥発」の「煥」は、火の光が四方に広がるさまを表した漢字で、「明らかなさま」を意味します。
「発」は「はなつ」「発する」「飛ばす」という意味なので、「煥発」は「明らかに輝き出るさま」を意味します。暗闇の中で火が明々と輝くさまなどを想像すると良いでしょう。
「才気煥発」の意味
上記の字義より、「才気煥発」は「優れた才能のはたらきが盛んに表われ出ること、またそのさま」を意味します。
類語としては「俊才(俊英)」「利口」「気が利く」「頭脳明晰」「少壮有為」などが挙げられます。
また、同じ「才気」という言葉を使用した例である「才気走る」「才気溢れる」も同じ意味ですが、「才気煥発」というとその人の才能が遺憾なく発揮され、自然と輝きあらわれているというニュアンスがあるように思えます。
才能が明確にあらわれている、という意味では「能ある鷹は爪を隠す」とは逆の意味になります。
間違いやすい要素について
「才気煥発」という言葉を使う際に間違いやすいと思われる点をいくつか指摘しておきましょう。
「才気煥発」の読みについて
「才気煥発」は「さいきかんぱつ」と読みます。「さいきかっぱつ」や「さいきかったつ」と読むのは誤りです。「才気活発」や「才気闊達」という言葉はありません。
「活発」や「闊達」と語感がよく似ている上に、「煥発」という言葉の使用頻度が少ないせいもあって、ごっちゃになりやすいものと考えられますので、注意が必要です。
「才器」
「才器(さいき)」は「才知と器量」のことで、「才気煥発」の「才気」とは違います。とは言えほとんど同じような意味ですから、明治時代あたりなら「才器」煥発という用例もありそうなものですが、現在は慣用的にそういう使い方はしていません。
必要であれば「才気煥発の人」に「器(器量)」はいらない、と覚えておくと良いでしょう。
「渙発」
「渙」は水が四方に溢れ出ること。転じて「渙発」は「詔勅(天皇の意思を表示する文書)をあまねく全国に行き渡らせること」を意味します。
偏が「火」から「氵(水)」に変わるだけで、随分意味が変わりますね。無論「才気渙発」としたのでは誤りです。
「才気煥発」の使い方
「才気煥発」の用例をいくつか紹介しましょう。
- 彼は若くして頭角を表した、才気煥発の人として知られる。
- 才気煥発する現代詩人、衝撃の本誌デビュー!
- 才気煥発という言葉はあの人にこそふさわしい。もっとも、もう少し身なりには気を使った方がいいと思うが……
2番目のように、「煥発する」という動詞に「才気」を付随させて使用する例は、著名な文芸評論家である小林秀雄の用例の中にも見えています。(「才気煥発する少壮歌人」『西行』)
「才気煥発の極み」とは
許斐剛による漫画作品『テニスの王子様』には「才気煥発の極み(さいきかんぱつのきわみ)」と呼ばれる技(能力)が登場します。
「才気煥発の極み」は「無我の境地」と呼ばれる、常人ばなれした一流のテニスプレイヤーにしか立ち入ることのできない領域の、さらに奥にあるという3つの「扉」のうち2つ目だとされます。
相手の戦術を完全に把握することで、相手方の失点を予告するというのがこの漫画における設定であり、そのことから通称「絶対予告」と言われているようです。