昔ながらの「ひよる」と若者の「ひよる」
「ひよる」という言葉は古くから使われている言葉ですが、1970年代に流行した学生運動で活動家の学生が体制に迎合している若者を指して「ひよりみ主義者」であるとか「体制にひよった」などとして使い始めたことから頻繁に使われる言葉となりました。
ただ、昔から使われている本来の「ひよる」の意味と、現代の若者が使用している「ひよる」では、似てはいるのですが微妙に違った意味で使用されているようですので、それぞれの意味を対比しながら解説していきます。
本来の「ひよる」の意味
態度をはっきりさせないで、強いほうや都合のいいほうにつくこと。状況によってコロコロ態度を変えるような様を指します。
若者言葉の「ひよる」の意味
自分より強い相手に怖気ずく、ビビる、いいなりになるという意味で使われています。本来の意味の都合の良いほうに態度をコロコロ変えるさまが転じて、怖気ずくといった意味の使い方になったのでしょう。
言葉というものは日々進化をしていくものなので、どちらも間違いではありません。
「ひよる」の語源
「ひよる」は漢字で「日和る」と書きます。
名詞の「日和」(ひより)が動詞に転じたもので、日和とは晴天・良い天気を指す言葉です。何かをするのにちょうど良い日を、○○日和と表現しますね。たとえば、「今日は絶好の釣り日和だ」などの言葉です。この時点では、前向きでポジティブなニュアンスがわかります。
日和を見る
昔、船の船頭さんが、天気を見て出港するかどうか判断することを「良い日和を見て出港する」といっていました。そして、この「日和を見る」という言葉がしだいに「ひよる」へと変化をしていきました。
さらに、そこから派生して、常に時勢を伺い、態度を変化させる人間を、日和見主義者(ひよりみしゅぎしゃ)と言う言葉で呼ぶようになり、この言葉あたりからマイナスイメージが先行するようになります。ここから言葉が徐々に独り歩きをして、本来の「成り行きを見て都合のいいほうにつく」という意味になりました。そして現在、前述のように、「ひよる」の使い方のニュアンスに再度変化が起きております。
「ひよる」の使い方と例文
それでは「ひよる」を使った例文を、本来の意味と若者言葉と二つの事例にわけてご紹介します。
本来の「ひよる」の例文
まずは、様子見で態度をコロコロ変えるという意味の例文です。
- ひよった態度をとるのではなく、君も戦いに参加するべきだ。
- 彼には計画性がないから他人の言葉にすぐひよってしまうね。
若者言葉の「ひよる」の例文
次に、若者が使う怖気ずく、ビビるといった意味の例文です。
- 彼はいつもは態度が大きいが、ヤンキーが現れれるとすぐにひよる。
- 面接で予想外のことを聞かれてひよってしまった。
いかがですか。
使い方の違いで言葉のニュアンスもずいぶん変わっていますね。
「ひよる」と似た言葉
ひよると似た意味の言葉には以下のものがあります。
「洞ヶ峠をきめこむ」
戦国時代に筒井順慶という武将が、山崎の戦いで洞ヶ峠という場所まで進軍したが、その場で明智光秀につくか羽柴秀吉につくか、情勢を見ながら日和見したことからこの言葉がうまれました。
「長いものには巻かれろ」
強いものには逆らわず従ってしまおう、という意味です。