「蘇る」と「甦る」の違いとは
「蘇る」と「甦る」の意味は、基本的に同じで以下の二つです。
- 死んだ人やもの、死にかけた人やものが息を吹き返す。蘇生(そせい)する。
- 勢いの衰えたものが、再び元のように勢いを取り戻す。
「よみがえる」は、「黄泉(よみ)」+「返る」の組み合わせでできた言葉です。「黄泉」は、日本の神話で死者の世界を指します。つまり、死者の世界から帰るので「よみがえる」というもので、ここから1の意味が生まれ、2の意味に派生しています。
この「よみがえる」に当てられている漢字「蘇」と「甦」は、どちらも訓読みが「よみがえる」です。次の項では、それぞれの漢字に字義や成り立ちをご紹介して、使い分けなどを見ていきます。
「蘇」の成り立ち
「蘇」の音読みは「ソ。ス」で、よみがえる、窒息状態から生き返る(=蘇生する)という意味があります。
「蘇」は、植物を表す「艸(くさかんむり)」と「禾(イネ科の植物)」に、動物である「魚」を組み合わせた会意文字で、相容れないもの同士を一つの文字にして、関係がない、はなれている、隙間(すきま)のある植物という意味を表していました。
やがて、この意味から転じて、喉の隙間が空いて窒息していた息が通ることを表すようになり、上記のような意味を持つようになったのです。
「甦」の成り立ち
「甦」の音読みは「ソ」で、よみがえる、生き返る、息がとおるという意味があります。「甦」は、「更」と「生」から成り立っています。「更」は、「硬」や「梗」の原字で、かためる、引き締めるとか、更新、更衣のように、変える、改めるという意味を持ちます。
この「更」に「生」がついて、息が詰まって死んで(死にかけて)緩んだからだが、息が通って生き返るという「蘇」と同じような意味を表します。さらに、「甦」は「穌」の俗字であることから、「蘇」に通じ、「蘇る」と「甦る」が同じ意味の言葉となっています。
「蘇る」と「甦る」の使い方
上記のように同じ意味を持つ「蘇る」と「甦る」の使い分けをご紹介します。実は、この二つの漢字表記には明確な使い分けがあるわけではなく、どちらも常用漢字ではないことから、公用文などでは使用されず、ひらがな表記されています。
しかし、上記の各漢字の成り立ちの違いなどから、一般的には次のような使い分けがされているようです。
- 「蘇」を使う場合:死者が息を吹き返す、蘇生する場合など
- 「甦」を使う場合:勢いの衰えたものや古くなったものがバージョンアップして勢いを取り戻すような場合など
なお、以上のようなことから、以下の例文の「蘇る」と「甦る」は、それぞれ入れ替えて使用しても誤りとは一概に言えません。
「蘇る」の例文
- 死者が蘇るようなホラー映画は苦手だ。
- 連日の晴天で枯れかけていた木が、恵みの雨のおかげで元気に蘇った。
- 瀕死の重傷を負って生死が危ぶまれていたが、10時間に及ぶ大手術の結果、奇跡的に蘇った。
「甦る」の例文
「蘇る/甦る」の類語
「再生」
「再生(さいせい)」には、「蘇る/甦る」とほぼ同じ意味があります。ほかに、切れたトカゲのしっぽがまた生えたり、古紙のような廃物をリサイクルしたり、録音・録画した音声や映像を出すことも「再生」と言います。
【例文】
- 災害によって破壊された町の再生に向けて官民一体となって動き出した。
- 壊れた時計を修理に出して再生した。
「復活」
「復活(ふっかつ)」は、死んだものが生き返ること、衰えたものや無くなったものが再び行われることで、「蘇る/甦る」と同義の言葉です。有名なエピソードでは、キリストの復活があります。
【例文】
- 一度死んだ者が復活したという不思議な話は、世界中にあると聞いたことがある。
- 長らく途絶えていた祭りが復活することになった。