「天網恢恢疎にして漏らさず」の読み方と意味
悪事を戒める慣用句!
「天網恢恢疎にして漏らさず」という慣用句は、「てんもう かいかい そにして もらさず」と読みます。ちょっと長いので、語句を分けながらその意味とともに解説していきましょう。
「天網」は「てんもう」と読みます。「天が張り巡らせた網」といった意味の名詞です。「恢恢」とは「かいかい」と読み、「大きく包み込み、ゆったりしているさま」を表す形容動詞です。さらに「疎にして漏らさず」は「そにしてもらさず」と読み、「目は粗いけれども、漏らすことはない」といった意味合いになります。
すなわちこの語句は「天が張り巡らせた網は広く、一見目が粗いように見えるが、人の悪事を決して見逃すことはない」といった意味を示す慣用的な表現です。言い換えれば「悪いことをすれば必ず発覚し、天罰を受けるだろう」と、人の悪だくみを戒めるものといえます。
中国の故事に由来
この慣用句は、古代中国の故事にちなんだものです。
中国・春秋時代の思想家、老子が著したとされる「老子道徳経」という全八十一章からなる長大な書物があり、その第七十三章に「天網恢恢、疎而不失」というくだりがあります。
これは「天道は厳正であり、悪いことをすれば必ず報いがある」といった人の道を説いたものです。この文章が基となって、「天網恢恢~」という慣用句が成り立ちました。
このため原典にちなみ、「疎にして漏らさず」の部分は「疎にして失わず」と言うこともあります。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の使い方
「天網恢恢疎にして漏らさず」は、中国の故事にちなむ少し難しい表現ですので、一般の会話やメールで日常的に使うことは少ないかもしれません。
主には、堅い文章の中で用いることが多い語句だといえますが、こうした故事に由来する慣用句を適切に文や会話の中に織り込むと、やりとりがウィットに富み、深みが増す場合もあります。意味や読み方を知っておくことは、社会人の教養という点でも大切なことだといえるでしょう。
なお「天網恢恢疎にして漏らさず」を正しく使う際は、漢字の誤用に注意が必要です。
「天網恢恢」は前述のように「天の網は広い」といった意味ですが、「天の目は恐ろしい」と勘違いしたり、字形が似ていることから「天網怪怪」と表記するのは間違いになります。
「天網恢恢疎にして漏らさず」の例文
「天網恢恢疎にして漏らさず」の例文を挙げると、次のようなものがあります。ちょっと難しい慣用句でも、日常的な会話ややり取りの中に適切に盛り込むことで、よりメリハリのある的を射た表現になります。
「巨額詐欺の犯人が海外の逃亡先で逮捕されたそうだ。まさに天網恢恢疎にして漏らさず、だね」
「近所のチャイムを押して回っていたいたずらっ子が、逃げる途中に転んでケガしたらしい。天網恢恢疎にして漏らさず、ということか」
「天網恢恢疎にして漏らさず、という言葉があります。お世話になっている〇〇様のご依頼とはいえ、試験に手心を加えることだけはご勘弁ください」
「天網恢恢疎にして漏らさず」の類語
「天網恢恢疎にして漏らさず」に類似する、慣用的な言い方には次のようなものがあります。
- 「当たる罰は薦(こも)着ても当たる」(=悪事による罰は、逃げ隠れしても必ず下るものだ、という意味)
- 「神様はお見通しだ」
- 「天に眼あり」
- 「お天道様は見ている」
- 「天罰覿面(てんばつてきめん)」(=悪いことをすればすぐに天罰が下る、という意味)
「天網恢恢疎にして漏らさず」を英語で言うと?
「天網恢恢疎にして漏らさず」を英語で表現すると、例えば次のような言い方があります。
Heaven's vengeance is slow but sure. (天の罰はゆっくりと、しかし確実にやってくる)
Murder will out.(殺人をすればいずれ明らかになる)
The mills of God grind slowly.(神の報いは遅いが、いずれ必ず下される)