「抒情的」とは?
「抒情的」は、(じょじょうてき)と読みます。「叙情的」という漢字表記もありますが、意味はどちらも同じです。
「抒情的」は、名詞「抒情」に接尾辞「的」がついた構成です。「抒情」とは、自分の感情、心情をゆたかに、訴えかけるように述べ表すことを意味します。したがって、「叙情的」とは、自分の気持ち、感情、心情などが外にゆたかに表れているようなという意味になります。
「抒」の字義
「抒情的」の「情」は、馴染み深い漢字ですが、「抒」がわからずに言葉の意味がとりづらい場合もあるでしょう。「抒」とはどのような意味を持つのでしょうか。
「抒」は、音読みが(じょ、しょ)、訓読みが(の-べる、く-む、のぞ-く)。意味は大きくわけて三つありますが、「抒情的」では、のべる、心の思いを打ち明けるという意味において用いられています。この言葉における「情」は、心、気持ちを意味しています。
「抒情的」が、感情や心情が外に表出しているような状況を指すということが、この漢字二文字の意味からも理解できます。
「抒情的」の使い方
「抒情的」の使い方は、自分の感情を言葉や文章で実際に表現しているのではないことに留意することがポイントです。たとえば、「私はとても悲しい」という文章は、まさに感情をのべる「抒情」ではありますが、抒情的とは言えません。
「亡き愛犬と散歩した小道を歩くと、北風に吹かれる枯葉さえもが去ってゆく犬の姿に思えてしまう」という文章には、「悲しい」という言葉はありません。そうでありながら、冬の小道で北風に吹かれつつ亡き愛犬を思う悲しみが伝わる「抒情的」な文章といえましょう。
文章であれ、絵画であれ、そこから「感情」が伝わるようであることを「抒情的」と言います。ただし、その感情は基本的にしみじみとした悲哀的なもの、なにかにうっとりと感動するような喜びなど静かな感情がほとんどです。爆発的な喜びや怒りなどの激しい感情は対象となりません。
「抒情的」の例文
「抒情的」の類語
情緒的
「情緒的」は、(じょうしょてき・じょうちょてき)と読みます。正しくは(じょうしょてき)ですが、現代の日本語では(じょうちょてき)のほうが一般的となっています。
「情緒的」は、おりにふれて喜怒哀楽などの感情を喚起するようなという意味の言葉です。ポジティブにもネガティブにも使う言葉です。ポジティブな意味では、情緒的な景色、音楽、メロディなど、感情をいい意味で刺激されるような場合に使います。
ネガティブな意味では、一時的な感情に左右される、流されるというニュアンスを含み、情緒的な意見、判断などのように使います。「感情的」は、感情をコントロールできないイメージですが、「情緒的」は、感情に引っ張られるニュアンスです。
内面的
「内面的」(ないめんてき)は、「抒情的」の類語としては、内面、精神、心理に関するさまを意味する言葉です。内面的な小説という場合は、人の心や感情を書き表した内容の小説という意味になります。
【例文】
昨日、観に行った芝居は内面的なストーリーで、自分の日々の感情に重ねて味わうことができた。
「抒情的」の反対の意味に近い言葉
抒事的
「抒事的」は、(じょじてき)と読みます。漢字表記は、「叙事的」のほうが一般的です。事実や事件を客観的にありのままに述べ記すようなという意味を持ちます。
抒情的な詩とは、感情、気持ちが現れ出ているような詩という意味ですが、抒事的な詩とは、物語詩のように、事実や出来事を記した詩という意味になります。
【例文】
インドの聖典とも言われる「ラーマーヤナ」「マハーバーラタ」は、神話を記した抒事的な詩のかたちで書かれているそうだ。