「滅相」とは
「滅相(めっそう)」には、名詞と形容動詞の意味があります。名詞は、仏教用語で、形容動詞は、名詞から転じて、それぞれ下記のような意味を持っています。
1の意味について
1の「有為(うい)」は、いろいろな因縁(原因や条件)によって作り出された全ての現象(四つの相:生相・住相・異相・滅相)のことで、諸行無常の「諸行」の同義と言われています。
生相(しょうそう)は、因縁によって生じること、住相(じゅうそう)は、存続すること、異相(いそう)は、変化すること、「滅相」は、消滅することです。「滅」は、消滅する、滅びる、「相」は、属性、特徴、徴候といった意味を持っています。
また、「滅」は、仏教における悟りの境地である「涅槃(ねはん)」の漢訳語でもあり、禅定(ぜんじょう:心静かに真理を観察して、心身が安定した状態になること)を滅定(めつじょう)とも言うところから、「滅相」の1のような意味が生じています。
「滅相」の使い方
仏教用語には、釈尊の教えに基づくものでありながら、インド仏教、中国仏教、日本仏教など国によって言葉の解釈などに微妙な違いもあります。また、日本仏教だけを見ても、多くの宗派に分かれているという現状を考慮して、ここでは、2の意味の使い方をご紹介します。
生あるものは必ず死ぬという真理があり、人間も「滅相」を避けることはできません。しかし、死にたくないと願う人間にとって「滅相」は、避けて通りたいこと、あってはいけないことなのです。
そこから転じて、2のような意味で「滅相」や、「滅相もない」という慣用句が使われています。最もよく使われる例では、人から感謝された時などに、「滅相もない」という言い方をして、「とんでもない」「どういたしまして」という気持ちを伝えます。
「例文」
- この度は、子供がいろいろとお世話になり、ありがとうございます。これはつまらないものですがお納めください。いえいえ、滅相もありません。当たり前のことをしただけです。
- お客さんのことを他人にペラペラしゃべるなんて滅相もない。私ではありません。
- 先頭に立って組織を引っ張っていくべき社長が、その職責を放棄するなんて滅相もないことだ。
- 飲酒運転なんて滅相なことをする人間は許せない。
「滅相」の類語
「滅法」
「滅法(めっぽう)」も仏教用語の一つで、因縁を超越した悟りの世界に存在する法で、無為(不生不滅の存在)と同義の言葉です。「法」は、仏の教え・道理・法則や正義などを表します。
この因縁(原因と条件)を超越したというところから転じて、はなはだしい、とんでもない、道理に外れたといった意味が「滅法」に生じました。古い言い方では「滅法界」とも言います。
【例文】
「法外」
「法外(ほうがい)」は、常識外れなこと、甚だしく度を越していることです。法の外ということで、法律を逸脱したという意味もあります。「常識外れ=とんでもないこと」なので、「滅相」の類語と言えるでしょう。
【例文】
- 三次会で入ったスナックで法外な料金を請求された。
- 昔、法外な利息で暴利をむさぼったサラ金は、今、消費者金融と名前を変えて大手銀行の系列に入って利益を上げているところも多い。
- クレーマーの法外な要求に対応する毎日で神経がすり減ってしまう。