「ギス」とは
「ギス」という言葉には、次のように様々な分野で用いられている言葉です。
- 魚の名前
- 大阪弁
- 音楽用語
- 若者言葉
それぞれの分野で用いられている「ギス」について、早速見ていきましょう。
魚の名前「ギス」
「ギス」とはどんな魚?
「ギス」という名前の魚がいます。姿かたちはスズキ科の「キス」と似ていますが別の種類です。ソトイワシ科に属する魚で、学名はPterothrissus gissu。日本においては、北海道以南の太平洋岸や新潟沖から鳥取沖の、水深200m以深に分布しています。
「ギス」の異名
「ギス」は東京での呼び名で、漢字では「義須」と表記されます。場所によっては、ニギス(キスに似ている)、オキギス(浅瀬で取れるキスに対して沖合で取れる)、オオギス(キスよりも大きい)、またはイダ・ダボなどと呼ばれています。
「ギス」の食べ方
ギスは鮮魚としてはほとんど出回らず、おもに、すりみにして練り製品に加工される魚です。かまぼこで有名な神奈川県小田原市では、最上級のかまぼこは、ギスのすりみで作られているそうですよ。
大阪の方言「ギス」
『アリとギス』?
子供の頃にイソップ寓話『アリとキリギリス』を読んだ方も多いことでしょう。このキリギリスは、大阪の方言では「ギス」または「ギース」と呼ばれています。キリギリスの「ギースチョン」という鳴き声に由来する呼び名のようです。
和歌における「キリギリス」
「キリギリス」でこの和歌を連想する方もいらっしゃるでしょうか?
ー『新古今和歌集』後京極摂政前太政大臣ー
しかし、古い俳句や和歌に詠まれている「キリギリス」は、多くの場合、コオロギのこと。キリギリスはキリギリス科の昆虫の総称、またはその中の1種を指しますが、コオロギ類に近い種類です。
上の歌は「コオロギが鳴く、こんな霜が降る寒い夜に、狭い筵(むしろ)の上で自分の着物を敷いて、ひとり寂しく寝るのだろうか」という意味です。
「衣片敷き」は、衣を敷き交わす恋人がいない状態、つまり独り身であることを指します。また、「さむしろ」は、「寒い」と「狭い筵(藁を編んだ敷物)」の掛詞(かけことば)。キリギリスは、秋の物悲しさを表しています。
音楽用語「Gis」
ドイツ語のドレミファソラシド
音楽の時間に習う、ドレミファソラシドに対応する日本語名は、ハニホヘトイロハ。英語では、CDEFGABCです。ドイツ語では英語と表記は同じですが、発音はツェー、デーのようにドイツ語読みとなります。
「Gis」とは?
ドレミファソラシドをそれぞれ半音上げると、日本語では「嬰(えい)」を付けて嬰ハ、嬰ニのように、英語では「sharp(♯)」を付けてC sharp、D sharpのように呼びます。
ドイツ語では「-is」が付いてCis、Disと表しますので、Gを半音上の音は「Gis(ギス)」となるのです。
ちなみに、ドレミファソラシドをそれぞれ半音下げると、日本語では「変(へん)」を付けて変ハ、変ニのように、英語では「flat(♭)」を付けてC flat、D flatのように表します。
ドイツ語では概ね「-es」か「-s」が付いてCes、Desのように呼びますから、Gを半音下の音は「Ges(ゲス)」です。
実音記号とは?
ところで、吹奏楽で使われる楽器で吹くドレミファソラシドは、ピアノで出すドレミファソラシド(実音)と音が違うことがあります。
たとえば、いろいろな楽器で「ソ」の音を吹くと、ピアノの「ソ」に揃わないことがあります。そんなときに使われるのが「実音記号」。実音記号には、上でご紹介したドイツ語の音の名前を用います。
実音記号で「Gis」と指示がある場合、ピアノやフルートでは「ソ♯」の音を出しますが、クラリネットやトランペットでは「ラ♯」、アルトサックスでは「ミ♯」を吹くと、それぞれの楽器の音が揃うのです。
若者言葉「ギスる」
「ギスる」とは?
トゲトゲしくて親しみにくい態度や無愛想で冷たい様子を「ギスギス(ぎすぎす)」と表現することがありますね。若者たちの間では、この言葉をもじった「ギスる」という言葉が使われています。
「ギスる」とは、人間関係がギスギスするという意味。交友関係にヒビが入ったり、うまく意思疎通ができないときなどに用いられる言葉です。
「ギスる」の例文
- オンゲ(オンラインゲーム)の共闘はギスることがあるから苦手だ。
- またあの人たちTwitterでギスってるよ。
- その気もないのに仲間の彼女にちょっかい出すの、ギスりそうだから止めろよ。