「ジリ貧」の意味
「ジリ貧/じり貧(じりひん)」は、じりじりと貧しくなること、じりじりとよくない状況・状態に落ち込んでいくことです。この記事では「ジリ」とカタカナ表記で統一します。
「じりじり」は、一定の方向にゆっくりと確実に動いていくさまを表す副詞で、「じりじりと貧乏になっていく」ことを略して「ジリ貧」というようになりました。
なお、経済用語では、相場が少しずつ安くなることを「じり安」と言いますが、これも「ジリ貧」の意味の一つです。
「ジリ貧」の使い方
「ジリ貧」は、元々、第一次世界大戦後の深刻な不況の中で様々な企業の業績が徐々に悪化したことを指して使われた言葉だと言われています。
やがて、「ジリ貧」は、使用範囲が広がり、国際関係から個人の人間関係や金銭問題、さらに学業・スポーツの成績、芸能人や文芸人の人気などについても、「だんだん状況が悪くなるさま」を表す言葉として使われるようになりました。
「例文」
「ジリ貧」に対する政府の政策
「ジリ貧」という言葉は、政府の経済政策にも使われています。具体的には、2016年4月に公表された「新産業構造ビジョン」の中間整理で掲げられた「痛みを伴う転換か安定を求めたジリ貧か、日本の未来をいま選択」というキャッチコピーです。
「新産業構造ビジョン」とは、これまで隆盛を誇っていた日本の基幹産業(家電、半導体など)が、中国をはじめとする東南アジアの台頭によって、徐々に衰退しているという状況を脱するための未来戦略を集約したものです。
ここでは、「第4次産業革命」とも呼ぶべきIoT、ビッグデータ、ロボット、AI等による技術革新による経済社会システムの大胆な変革が、新たな成長に寄与する鍵であるとしています。今は、ジリ貧から脱出するために痛みを伴う転換が必要な過渡期かもしれませんね。
「ジリ貧」の類語
「先細り」
「先細り」は、先に行くほどもとの状態より細くなっていることやそのさまという意味から転じて、物事が、時の経過とともに次第に衰えていくことや財産などが減っていくことをいう言葉として使われています。じりじりと衰え、減っていくということでもありますね。
【例文】
- 相続税を払うために不動産や証券の売却を繰り返すと、財産が先細りして、いずれなくなってしまう。
- 各国が漁業資源獲得に力を入れだして久しいが、日本の漁業は先細りする一方だ。
「斜陽」
「斜陽(しゃよう)」は、西に傾いた太陽、あるいは夕日の斜めにさす光のことで、そこから、かつて勢力のあったものが衰えていくことに例えて使われています。
太宰治の小説に「斜陽」というタイトルのものがあります。これは、第二次大戦後の没落貴族の母子の生活や心情を描いた小説としてベストセラーとなり、「斜陽族(没落する上流階級)」という言葉も生まれました。
【例文】
- 1950年代に黄金期だった映画産業は、テレビの登場によって1960年代には斜陽産業化した。
- かつての基幹交通であった鉄道は、道路や航空路線の整備拡大によって斜陽の時代に入って久しいが、○○鉄と呼ばれる鉄道ファンは増加している。