「虎の子」の意味とは?
「虎の子」(とらのこ)は、大切にして身につけて守り離さないもの、目につかないところに用心して隠し持っている金品をさします。
もともと「虎の子」は虎の子供を指します。虎(特に母親の虎)は子供を大切に守りながら育てるため、その様子から人が金品を大切に持っていることに例えています。
「虎の子」の使い方
「虎の子」はその人にとって大切なものや、高価な貴重品、貯めているお金などを指します。多くの場合、「虎の子」はその所有者が肌身離さず持っていたり、厳重に保管したりといった扱いを受けます。その性質上、はなから手放す気がないものを指すこともあります。
「虎の子」の例文
- 私にとっての虎の子は家宝の掛け軸だ。
- 積立して〇〇円貯まった虎の子は、絶対に家族に見つからないようにしないといけない。
- 虎の子をはたいて妻へ指輪をプレゼントした。喜んでくれて良かった。
- 1億円が当たった当たりくじは大切な虎の子だ。
- 金品ではないが、自分の虎の子は我が娘だ。
「虎の子」の類語
へそくり
「へそくり」とは、主に奥さんが旦那さんに黙って内緒で貯めているお金をいいます。もともとは「綜麻繰り金(へそくりがね)」で、主婦が「綜麻(へそ)」(意味:麻を紡いで巻いた糸巻きのこと)を繰って(意味:紡いで)内職をして収入を得たことが由来です。
時代が下るにつれて「臍繰り」という字が当てられるようになりました。大切にお金を貯め込んでいるという点で、その人にとっての「虎の子」といえますね。
【例文】
- A家の奥さんは、へそくりが十分貯まったから、別れようかと思っているとのことだ。
- タンスの奥にへそくりを隠している。
秘蔵
「秘蔵」(ひぞう)とは、人目につかぬように大切にしまっていること、またはそういったものです。人にも使え、手元から離さずに大切に育てている人といった意味でも使います。「秘蔵の品」「秘蔵のお宝」「秘蔵っ子」「秘蔵の娘/息子」のような使い方があります。
【例文】
- あの書画は〇〇家秘蔵の家宝なので、公開することはめったにない。良い時に立ち会えた。
- 東京ヤクルトスワローズが常に優勝争いをしていた頃、古田捕手は野村監督の秘蔵っ子と言われていた。
宝物
「宝物」(たからもの/ほうもつ)は、貴重で価値が高く大切にしている物、高価かどうかは関係なくその人にとって大事に持っていたいかけがえのない物をいいます。
多くの人にとって、「虎の子」と呼べるものは同時に「宝物」でもあるでしょう。
【例文】
- 購入した金の延べ棒は、困った時に私を支えてくれる宝物です。
- 不器用な彼がビーズを使って編んでくれた指輪は、安くとも大切な宝物なんですよ!
「虎の子渡し」について
「虎の子渡し」とは、中国に伝わる説話集『癸辛雑識』に登場する「虎、彪(ひょう)を引いて水を渡る」というエピソードのことです。
その内容は、虎が3匹の子供を産んだ時に彪(ひょう)の子が1匹混じり、他の2匹を食べようとしていたために、親は虎の子と彪が一緒にならないように苦労(渡る順番を考慮)して川を渡るというものです。
慣用句「虎の子渡し」の意味
上記のエピソードから、「虎の子渡し」は慣用句にもなっています。親が苦労して子供を順繰りに川を渡す様子が、借金の返済に困って期日が近いものから順繰りに返済するさまに重ね合わせて、苦しい家計のやり繰りの意味として使います。
また、何かを順番に渡す様子から、リレーのように順繰りに物を渡すことや、物が次々に人手に渡っていく様子に例えて使うこともあります。
「虎の子渡し」:パズル問題や遊び
「虎の子渡し」は、そのエピソードに基づき、脳トレなどの推理パズルなどで「虎の子供が食われずに、無事に対岸に渡り切る方(順番や手順)は?」と出題されるケースがあり、もともとのエピソードを元にした様々なバリエーションがあります。
「虎の子渡し」:龍安寺の石庭
京都の龍安寺の石庭「方丈庭園」の庭石の配置を、「虎の子渡し」に例えて呼ぶ場合があります。その庭には、白い砂の上に東側から見て、5個・2個・3個・2個・3個の計15個の石が置かれています。
石のサイズがとびとびに大小ある様子から、親虎と虎の子が順番に川を渡るように見えるのでしょう。