「備えあれば憂いなし」の意味
「備えあれば憂いなし」(そなえあればうれいなし)は、常日頃から念入りに準備をしておけば、急にことが起こった場合でも心配せずにすむという意味のことわざです。
「備えあれば患い無し」とも表記します。「憂い」も「患い」も読み方は同じ「うれい」で心配事という意味です。
また、「備え」を「供え」と間違える方もいますが、「供」という字は神仏や身分の高い人に金品をささげることです。準備する、用意するという意味では使わないため混同しないように注意しましょう。
「備えあれば憂いなし」の使い方
「備えあれば憂いなし」は、警句や教訓で使われることわざです。普段から準備を怠らなければ、トラブルに巻き込まれたり、急を要することがあったりしても慌てずにすむということを言い聞かせるように使われます。
また、突発的な仕事を任されたり、代役を頼まれたりといったことがあっても、日頃から下調べをしたり、心構えをしたりすれば、焦らずに対応できます。自身の座右の銘として心に留め置く人もいるようです。
「備えあれば憂いなし」の例文
- 備えあれば憂いなしということを家族に説明し、非常用袋を用意するつもりだ。
- 停電が続いたので、モバイルバッテリーを購入してよかった。備えあれば憂いなしだ。
- Aさんは備えあれば憂いなしを地で行く人で、会社や自宅周辺の避難経路が頭に入っている。
- Bさんの代理で急遽(きゅうきょ)得意先に出向いたが、備えあれば憂いなしで資料を調べておいてうまく対処できた。
「備えあれば憂いなし」の語源
「備えあれば憂いなし」の語源は、中国古代の歴史書『書経』(しょきょう)からきています。中国の殷(いん)の22代の王「高宗(こうそう)」に仕えた宰相で名臣と伝えられる「傅説(ふせつ)」の発した言葉が元になっています。
惟れ事を事とする、乃ち其れ備え有り、備えあれば患い無し
【読み】
これことをこととする、すなわちそれそなえあり、そなえあればうれいなし
【現代語訳】
なすべきことをしっかりとする、すなわちそのことは普段からの備えが有るということ、備えがあれば心配は無い。
「備えあれば憂いなし」と似た意味のことわざ
転ばぬ先の杖
「転ばぬ先の杖」(ころばぬさきのつえ)とは、必要だと考えられる物を、前もって手抜かりなく準備しておけば失敗することはないという意味です。「備えあれば憂いなし」と似たようなことわざです。
「転ばぬ」は「転ぶ」に打ち消しの助動詞「ぬ」がついています。「先」は、~の前に、事前にということです。転ばないように事前に杖を準備しておくことを、抜かりなく準備しておくことに例えています。
他に同様の意味で、「転ばぬ先の杖柱(つえはしら)」「倒れぬ先の杖」「こけぬ先に杖」などのことわざもあります。
【例文】
転ばぬ先の杖という先人の教訓を活かし、雨風が強くても濡れないように傘とレインコートを持っていくことにした。
濡れぬ先の傘・降らぬ先の傘
「濡れぬ先の傘」や「降らぬ先の傘」は、「備えあれば憂いなし」と似たような意味で、ある程度起こりそうなことを予測して準備をすれば後は心配ないということです。濡れる前(雨が降る前)に傘を用意すれば自分が濡れてしまうことはないことを例えています。
【例文】
買った物の持ち帰りに困る恐れがあるため、濡れぬ先の傘にならって大きめのエコバッグを用意した。
「備えあれば憂いなし」と反対に近い意味のことわざ
盗人を見て縄をなう・泥棒を捕らえて縄をなう
「盗人を見て縄をなう」(ぬすびとをみてなわをなう)や「泥棒を捕らえて縄をなう」(どろぼうをとらえてなわをなう・略称/「泥縄(どろなわ)」)ということわざは、いざ物事が起こった時に準備をし始めても遅いという意味です。
確かに盗人を見かけた時や泥棒を捕まえてから、急いで拘束するための縄をより合わせようとしてもすでに遅く、早々と逃げられてしまいますね。そのような様子をすでに手遅れであることに例えています。早めに準備をしていなかったことを諌(いさ)める意味で使われます。
【例文】
夏休みの宿題を最終日になってやろうとしても、盗人を見て縄をなうようなものだよ!なんで早くやらなかったの!