「ハニー(honey)」の意味
「ハニー(honey)」は、大きく分けて三つの意味群をもつ言葉です。食物としての意味、甘美さ・優しさなどの性質・特性を表す意味、そして、人に呼びかける言葉としての意味。
いずれにしても、古来より蜂蜜が甘いものの代表として捉えられてきたゆえの、「甘さ」を背景とした意味の派生です。今回は、それぞれの意味群にわけて、honeyを解説してまいりましょう。
食物としてのハニー(honey)
カタカナ語として日本語に定着した「ハニー」の意味は、もちろん「蜂蜜」です。日本語では、食物としてはそれ以外の意味をもちません。
英語としてのhoneyは、多少多義的に、下記のような意味をもちます。
- 蜂蜜
- 蜜のような甘さをもつもの
- 花蜜、糖蜜
- (俗語で)ビール
人や物の性質・特質としてのハニー(honey)
英語では「甘さ」を背景として、「honey」は様々な使われ方をします。
名詞としてのhoney
名詞としての「honey」には、以下のような意味があります。
- 甘さ
- おいしさ
- 恋人・愛する人
- 素敵な人(物)
- 素晴らしい人(物)
- (蜜のような)甘美さ、優しさをもつ人(物)
- 慰めとなるもの
【文例】
- He talks to her in a voice dripping with honey(彼は、やたらに甘い声で彼女に話しかけた)
- You are really my honey, Jane!(ジェーン、君は本当に僕の癒しだよ)
形容詞としてのhoney
「honey」は形容詞としても同様に、甘さや優しさを表す用い方をされています。
【文例】
- How honey you are, Betty!(ベティ、君はなんて優しいんだ!)
蜜のような甘美さで男性を罠におとしいれるhoney trap(ハニートラップ)や、新婚の蜜月・新婚旅行のhoneymoon(ハネムーン)は、日本語にも定着していますね。
動詞としてのhoney
動詞として「honey」を用いる場合は、少々ネガティブなイメージもまざってきます。お世辞を言う、へつらう、おべんちゃらを言う…つまりは「甘い」言葉で取り入るわけです。
【文例】
- He always honeys his boss.(彼はいつも上司にへつらっている)
呼称としてのハニー(honey)
英語で用いられる「honey」は、実のところ、「蜂蜜」よりも「呼称のhoney」の頻度のほうが高いと思われます。あらゆる場面で「honey」という呼びかけが溢れているのです。
同じように、「sweetie・dear・daring・babe」などを主なものとして、英語には数えきれないくらいの「呼びかけ言葉」が存在します。
それぞれ含む意味が微妙に異なっていますので、用い方には要注意!親しみをこめたつもりが、とんでもなく失礼な呼びかけになったりもします。
呼称としてのハニー(honey)の注意点
「honey」という呼びかけは一般的なもののひとつですが、夫婦間、恋人間、親しい同性間、親から子、年長から年下に向けて用いるのが基本ライン。
親密な関係ではない異性間で用いる場合は、慎重に。とくに男性が女性に不用意に用いると「Don't honey me!」(そういう呼び方するの、やめてよ!)と拒絶されてしまうかもしれません。これは、ちょっとかっこ悪いですね。
TPOや間柄をわきまえれば、逆に、「甘い」呼びかけ言葉は、人と人との潤滑油になってくれます。英語の「あなた」は、「You」のみです。日本語には、あなた、あなたさま、貴殿、貴兄、貴姉、君、おまえ、あんた…名前で呼ぶ場合も、由美、由美さん、由美ちゃん、由美くん…日本語の豊かさに驚きます。
「You」しかもたない英語では、様々な呼びかけ言葉を加えることによって、こめる感情のニュアンスを補っているのかもしれません。
乳と蜜の流れる土地
ユダヤ教徒、キリスト教徒にとって、ハニー(honey)は、ただ甘く滋養ある食物というだけではありません。
旧約聖書「出エジプト記」の3章8節で、神は、イスラエル人をエジプトから「豊かな土地」に救い出すと約束しています。その豊かさは、「乳と蜜の流れる土地:land flowing with milk and honey」と表現され、旧約聖書に何度も登場しています。
その土地カナン(地中海、ヨルダン川、死海に囲まれた地域の古代名)は、約束の地とも呼ばれています。
神に、豊かさの象徴とされたハニー(honey)。そんなことを思いながら口にすれば、その甘みはさらに深い味わいとなることでしょう。