「干渉」の意味
「干渉(かんしょう)」には、大きく分けて三つの意味があります。
- 自分以外の人や物事に関わって、口をはさんだり、自分の考えに従わせようとすること。
- (国際法上)ある国が、他の国の政治や外交問題に口をはさんだり、無理やり介入しようとすること。
- 科学の分野で、 光や音などの二つ以上の同じ種類の波が重なって、互いに強め合ったり弱め合ったりする現象。
「干」には、洗濯物を干(ほ)すことや、武器の鉾(ほこ)や盾(たて)のほかに、おかす、かかわるという意味があり、干与(=関与)や干犯(かんぱん:相手の権利を侵すこと)などにも使われています。
「渉」は、川を歩いて渡るという意味の会意文字で、わたる、かかわるという意味を持ち、交渉、渉外(交渉すること)などで使われます。この二つの漢字の意味から、「干渉」という熟語で上記1のような意味を表し、それが2の意味に転じたり、3の専門用語として使われています。
「干渉」の使い方
1の意味「他人のことに口をはさむ」
人が何かしようと思っている時にかかわってきて、自分の意見や考えを通そうとしたり、仕事などで自分に関係ない部署のことに口出しする人がいますが、そのようなときに「干渉」を使います。
【例文】
- 私たち夫婦はお互いの行動に干渉しないという約束をしています。
- 実家の親や小姑が、育児に何かと干渉してくるのでやりにくい。
- 人事課が、僕を新人の教育係に命じたくせに、ことあるごとに干渉してくるから嫌になる。
2の意味「他国の政治や外交に口をはさむ」
国際法は、主に国同士の合意によってその関係を規定する法律で、条約や国際慣習などから成り立っています。その中では他国の内政(国内問題など)に口出しすることを禁じており、これを内政不干渉の原則と言い、この原則は、各国の平和共存に必須の条件とされています。
しかし、現実には世界の様々な国や地域において内政干渉が問題になることがあり、ニュースなどでも報じられています。「干渉」には、武力による威嚇や行使を伴うことが多く、それ以外では経済的措置や政治的措置などがあります。
一方、条約で「干渉」を認めている場合や他国の人種または宗教上の迫害の中止を求める「人道のための干渉」などの場合には、合法的干渉として、「干渉」が認められることもあります。
【例文】
- ○○国の首脳が、△△国の経済問題について強硬な意見を述べたことが内政干渉だとして問題になっている。
- 国際テロに対する相互防衛という名目での内政干渉は排除されなければならない。
3の意味「科学分野での干渉」
冒頭の画像をご覧ください。シャボン玉の中に様々な色が写っていますね。このような現象を光の「干渉」と言います。例えば、青い光の波が、シャボン玉のある厚みの膜の表面と内側で反射して、そろって進むときにはその青い光が強められます。
しかし、膜の厚さが変わると、二つの光の波がずれて弱められるため青く見えません。 波長の異なる色の光の波であれば、青が見えない膜の厚さでもその色が強まるものがあります。つまり、膜の厚さと光の波長の相互作用で色の強弱ができるのです。
音も光と同様に波ですから、「干渉」が起こります。例えば、1つの発振器から二つのスピーカーで同一の振動数、同一の位相(タイミング)の音を出すと、音波が「干渉」して空気が良く振動する(よく聞こえる)場所とほとんど振動しない(よく聞こえない)場所ができるのです。
「干渉」の類語
「お節介」
「お節介(おせっかい)」は、頼まれもしないのに出しゃばって、余計な世話を焼くことです。あなたの周りにもお節介な人がいるのではないでしょうか。主に、「干渉」の1の意味の類語です。
【例文】
「僭越」
「僭越(せんえつ)」は、自分の立場や身分などを超えて出しゃばることです。意味からすると、「僭越」な行為は非難や敬遠の対象になる場合に使われると思われますが、自分の言動を謙遜して使う場合もよくあります。「僭越」も「干渉」の1の意味の類語です。
【例文】
- 君のような若輩者が、会長に意見するなんて僭越なことだとわきまえなさい。
- 僭越ではございますが、わたくしが乾杯の音頭を取らせていただきます。
「干渉」の対義語:「放任」
「放任(ほうにん)」は、干渉しないで、その人のやりたいよう好きにさせておくことです。「放任」は、家庭での養育や教育の場面でよく使われます。子供の自主性や自由に任せて何も要求しない代わりに、失敗に対してフォローしないことが「放任(主義)」と言われています。
しかし、子供の成長過程においては、失敗が許容される時期もあり、この時期に規範などを身に着けるようにしつけ・教育する必要性があります。また、育児放棄や児童虐待などを正当化するものとして「放任」を使う人がありますが、全く別問題です。
子供の養育関係以外では、物事の過程や結果を放置して、成り行きに任せるような場合にも「放任」を使うこともあります。
【例文】
- うちは放任主義ですから、成績が良かろうと悪かろうと親には関係ありません。
- このような状況を放任しておくのは、わが社の将来にとって好ましいことではありません。