「茶番」の意味
「茶番」<ちゃばん>には次のような意味があります。現在において用いられる「茶番」は、おもに3の意味です。そこで、この記事では意味3を中心に解説しましょう。
- 客のために給仕や茶の用意をする人。
- 「茶番狂言」の略。
- 見え透いたばかばかしい物事や行為。ふざけた振る舞い。
なお、『YouTube』などの動画で用いられている「茶番」については後述します。
「茶番劇」とは
「茶番劇」<ちゃばんげき>という言葉もありますね。これは「茶番」の意味3、「見え透いた馬鹿馬鹿しい物事や行為。ふざけた振る舞い」と同義です。
「茶番」の由来は「茶番狂言」
「茶番」の語源は、江戸時代まで遡ります。江戸時代の歌舞伎の世界では、地位の低い役者(大部屋役者)はお茶汲みも担当していました。この役者達が「茶番」です。
「茶番」たちがお茶を配る際に交える滑稽な芝居や、千秋楽の余興での物真似芝居が、稚拙な笑える芝居として「茶番狂言」と呼ばれるようになりました。
「茶番狂言」は気の利いたおふざけとして、江戸時代末期には大流行したそうです。なお、「茶番狂言」には、「立茶番」(衣装を着けて演じる台詞や所作もある寸劇)と「口上茶番」(座って洒落や滑稽を述べる話芸)の二種類があります。
この、「茶番が演じる下手な芝居」というところから、「見え透いた芝居・ばかばかしく下手な芝居」のことを指す、「茶番」や「茶番劇」という言葉となったのです。
「茶番」の使い方
「茶番」の意味3は次のように使います。
- 「選挙なんて茶番だ」と嘯いて(うそぶいて)いないで、投票には行くべきだ。
- 汚職疑惑の渦中にある議員が「記憶にない」などと言うのは茶番としか思えない。
- 私は彼の浮気に気付いていたが、夫婦という茶番を演じ続けた。
- 人に話したことで、自分のつらい経験が茶番のように思えて、少し気が楽になった。
- いつまで誠実ぶっているつもりだ?いい加減、この茶番を終わらせてくれ。
『YouTube』の「茶番」
『YouTube』などの投稿動画で「茶番」というジャンルもあります。今までの「茶番」の説明からはピンと来ないかもしれませんね。この場合の「茶番」は何を指しているでしょうか。
動画における「茶番」
動画投稿者が言う「茶番」とは、いわば「茶番動画」です。自作のアニメーションなどにセリフやナレーションを付けたナンセンスな話や予定調和の話などを「茶番」と呼んでいます。多くの場合、タイトルに「茶番」と入っているので見つけやすいでしょう。
「ゆっくり茶番」とは
「ゆっくり茶番」は動画のテンポが遅いという意味ではありません。「茶番」のうち、『ゆっくり』というテキスト読み上げソフトを使って音声部分を作っているものを「ゆっくり茶番」と言うのです。
動画における「茶番」の問題点
こうした「茶番」には、既存作品のキャラクタや設定を踏まえた同人作品的なものもあります。中には、既存キャラクタの絵を無断転載しているものもあるので、著作権問題が指摘されることもあります。
「茶番」の類語
「コメディ」
「コメディ」とは、日本では、「人を笑わせるような演劇・喜劇」のことです。「茶番狂言」に近い意味ですが、比喩的に「ばかばかしい物事」ことを差す場合もあります。
なお、西洋演劇における「コメディ」は「悲劇ではないもの」を指します。そのため、面白おかしい内容とは限りません。
「猿芝居」
「猿芝居」<さるしばい>には、①「猿に衣装を着けて物真似芝居をさせる見世物」、②「下手な芝居を馬鹿にする言葉」、③「すぐに見透かされる浅はかな謀(はかりごと)」という意味があります。③の意味は「茶番」に似ていますね。
①は江戸時代に盛んに行われていた大道芸の一種です。三味線や太鼓、口上に合わせて、猿に歌舞伎役者を真似た所作をさせるというものでした。
「出来レース」
「出来レース」<できれーす>とは、「見かけは競い合っていても、実際には事前の話し合いで結果が決められている競争や勝負」のことです。八百長や談合とも言い換えられます。
競い合っているような芝居をしているばかばかしさがある点では、「茶番」に類する言葉と言えるでしょう。